/2004年6月号

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特集

枯渇が迫る石油

JUNE 2004

限られた
地球資源の行方



中東依存は避けられない

 メキシコ湾からロシアまで、現在脚光を浴びているその他の原油の産出量が減り始めれば、こうしたこともうれしいニュースと言えなくもない。しかし、タールサンドの原油だけでは、政治的に不安定な中東の原油に対する依存度が強まる流れに歯止めをかけるのは不可能だろう。米エネルギー情報局の推定によれば、ペルシャ湾地域の原油は20年後には、世界市場の2分の1から3分の2を占めるという。73年の第1次オイルショック以前と同じ比率だ。

 このところ石油の専門家の間では、将来の見通しをめぐって激しい論争が起きている。悲観論者は、大半の油田は60年代初めに発見ずみであり、その後は発見のペースが鈍っていると指摘する。したがって、これから見つかる通常の原油はほとんどなく、世界の原油産出は2010年までにピークを迎える可能性があるというのが悲観派の結論だ。これに対して楽観論者は、油田探査を後押しする経済的・政治的要因を無視した単純な推定にすぎないと反論している。

 この論争の最終的な行方は、世界最大の産油地帯である中東にどれだけ原油が残っているかで決まる。それ以外の地域の原油産出が減少に転じた場合、世界の確認埋蔵量の3分の2近くを占める中東原油は最後の頼みの綱になる公算が大きい。だが、テキサス州ヒューストンのエネルギー専門の投資顧問銀行シモンズ&カンパニーのマシュー・シモンズによると、それも長くは続かないかもしれない。

 「私たちがとてつもない埋蔵量をもつ国と思い込んでいた」サウジアラビアでも、新しい大型油田は何十年も見つかっていないと、シモンズは指摘する。油井から水が出るようになったら寿命という見方があるが、実際にサウジの油田でこの現象が起き始めているという。

 もしシモンズの話が正しければ、中東も予想外に早い時期に、高まる石油需要を満たせなくなる可能性がある。一方、楽観派の米国地質研究所(USGS)は2000年の調査で、こうした悲観派の見方より少なくとも50%多い量の原油が、中東を中心にまだ残っていると結論づけた。

 新しい技術の登場で既存の油田から採取できる原油が増え、同時に巨大な新油田の発見も可能になるはずだと、USGSは予測している。多くのエコノミストも同意見だ。楽観派に言わせれば、新油田の発見が減ったのは、イラクやイラン、サウジアラビアといった石油資源の豊富な国が新しく油井を掘るメリットを感じなかったからにすぎない。

 ただし、USGSの調査を主導した地質学者のトーマス・オルブラントは、たとえ自分の考える世界の原油埋蔵量がもっと多いとしても、増え続ける世界の石油需要を永遠に満たすのは不可能だと語る。「原油や天然ガスは有限だ。個人的な意見を言えば、今後数十年間のことが心配だ」と言う。

 原油はいきなりゼロになるわけではない。徐々に消え去るのだ。それでも世界が70年代のオイルショックより長い期間にわたり、石油不足に直面するのは避けられないだろう。同時に、世界は厳しい選択を迫られる。カナダのタールサンドから採取する原油の産出量を増やすべきなのか。米国西部に巨大な埋蔵地域があるオイルシェールや、多くの有機成分を含み、高温で加熱すると原油がとれるその他の岩石を活用すべきなのか。

 だが、どちらの方法も環境面で深刻な影響が出る。では、新たな天然ガス資源の発見や植物からの燃料抽出、太陽光発電や風力発電、燃料電池自動車用の水素を製造する原発プラントの建設に期待を寄せるべきなのか。しかし、いずれも実用化は容易ではなく、開発にも時間がかかる。

 メキシコ湾上に浮かぶ掘削船エンタープライズのエンジニアたちは、03年夏までに1500万ドルの予算オーバーで作業中だった油井の掘削作業を終え、今は別の場所で掘削を続けている。しかし、原油を手に入れるための創意工夫と労力の少なくとも一部は、石油需要を抑制するために使う必要がある。

 「人類は石油への依存を緩和するために、今すぐ何らかの行動に出るべきだ。母なる大地から手痛いしっぺ返しを受けるのを待っていてはだめだ」と、エネルギー問題コンサルタントのカバーロは言う。私たちがガソリンスタンドへ行くたびに、安い石油の時代は終わりに近づくのだから。

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