第12回 雨雨雨でお祭り騒ぎなのは?
一匹のナメクジ*が、最近シャワールームにすみついた。タイルに猛烈に生えるカビを食べているようだ。お掃除ありがとう~。排水溝に流されたりしても、次の日にはまた定位置にいるので、愛着がわいてきた。なんかペットのようだ。
5~11月ぐらいまでが雨季のコスタリカ。でも、9~10月は同じ雨季でも格がちがう。これまでなら朝は快晴、午後になってスコールのような雨が降ってたのだけれど、最近は朝からどんより曇りかしとしと雨、朝から雷が轟くこともあるぐらいだ。洗濯ものも乾きがわるく、家の壁や天井にカビが生え始めた。「こら、すごいわ!」
この時期は昆虫の世話にとくに神経をつかう。あまりにも湿度が高いので、菌類(カビ)やダニなんかがとにかく元気になる。シャワールームだけではなく、飼育袋の中も彼らにとってはお祭り状態だ。
幼虫たちが宿や餌にしている植物がすぐに腐ったり、カビが生えたりしないように、水分調節をこまめにしなければならない。虫たちを攻撃して、食べてしまうダニが出現したら大変だ。幼虫やさなぎの周辺や植物をすみずみまで顕微鏡でのぞき込み、ダニやダニの卵をピンセットの先でプチプチをつぶしていく戦いが始まるのである。長期戦だけはさけたい。
ちなみに、水虫もこの時期はお祭り騒ぎ状態です・・・
*中南米には、ナメクジやカタツムリに「コスタリカ住血線虫」がいる場合があるので、少し気をつけないといけない。
Umbelligerus sp.
体長:4 mm 撮影地:プエルト・ビエホ・デ・サラピキ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
Umbelligerus sp.
体長:4 mm 撮影地:プエルト・ビエホ・デ・サラピキ、コスタリカ

西田賢司(にしだ けんじ)
1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html