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マービン・マイヤー氏インタビュー(前編)



マービン・マイヤー氏
米国チャップマン大学(カリフォルニア州)
聖書・キリスト教学科教授
チャップマン大学アルバート・シュヴァイツァー研究所所長
グノーシス主義およびナグ・ハマディ文書、新約聖書外典の権威。
「原典 ユダの福音書」(2006年・共著)、「The Gnostic Discoveries」(2005年)から「The Gospel of Thomas」(1992年)まで著書多数。

『ユダの福音書』との出会いから、この文書の分析、そしてグノーシス思想とユダの裏切りなどについてマービン・マイヤー氏に語っていただきました。

グノーシス文書
 2005年の8月頃から、『ユダの福音書』を含む通称“チャコス写本”に取り組んできました。思いもかけない幸運な偶然から、このプロジェクトに参加することになったのです。在米エジプト大使館が、米国の首都ワシントンにあるケネディ・センターで開催したイベントで、私はナグ・ハマディ文書など古代のパピルス文書についての講演を行いました。そのイベントに、ナショナル ジオグラフィック協会の人も来ていたのです。講演後、大勢の聴衆から、グノーシス文書や謎に満ちたパピルス文書についていろいろな質問を受けました。その際,ナショナル ジオグラフィック協会の人たちが前方へ来て、私に名刺を渡し、「後日、ご連絡させていただきます」と言ったのです。電話があったのは、数週間後のことでした。「大切なご相談があるのですが」と言うので、「一体なんでしょう?」と聞き返しました。そして、話を聞いていくうちに、ことの重大性が次第にわかってきました。その年の9月、私は、問題の文書を見てほしいという依頼を受け、ワシントンにあるナショナル ジオグラフィック協会の本部を訪れました。『ユダの福音書』をどうすべきか、協会の人たちは当惑していました。刺激的なタイトルで、内容も非常に興味深いものに違いありません。しかしいったいどんな意味を持つのでしょうか? 粉々になった破片を復元した文書で、判読しにくかったり、あるいは判読できない部分もありました。そこで私は約1週間、関係者以外は入れない部屋にこもり、辞書と専門用語集と首っ引きで、このコプト語文書と格闘しました。カリフォルニアから連れてきた、コプト語を専門とする助手の力も借りました。そして一週間後、待ち構えていた人々にこう報告したのです。「文書の内容がわかりました。これはグノーシス派の貴重な福音書です。イエスだけでなく、ユダも登場します。それも、最も忠実で、洞察力に溢れるイエスの弟子として描かれているのです」

本物の確信
 チャコス写本はパピルス紙にコプト語で書かれていて、こうした文書はコプト語文書と呼ばれています。この写本は、4つの文書から構成されていました。写本とは、冊子のようなものです。写本を意味する英語「コデックス」は古代ラテン語で「本」を意味し、巻物でなく、ページをまとめて綴じた形になっているものをさします。この写本を構成していたのは、ピリポに送ったペテロの手紙、ヤコブの名を冠し、『ヤコブの第一黙示録』として知られているものとほぼ同じ内容の文書、次に『ユダの福音書』、そして研究者たちが仮に『アロゲネス(異邦人)の書』と名づけた文書の断片の4つです。『アロゲネスの書』の内容は興味深く、イエスのことを、啓示を与えるために人の姿で現れた異邦人として描いています。写本をひと目見て、本物に違いないと確信しました。私にとってなじみの深いナグ・ハマディ文書で使われているコプト語と、この写本で使われているコプト語が酷似していたからです。一種の方言ですが、中部エジプト独特の特徴もあり、これが文書自体に信頼性を感じさせました。また、文書の内容はかなり複雑でしたが、グノーシス派の世界観をはっきりと表現していました。『ユダの福音書』はグノーシス主義の中でも、セツ派の文書です。明瞭に、そして詳細に描かれたそれぞれの登場人物の特徴も、セツ派の視点を反映しています。何より興味深いのは、『ユダの福音書』が非常に初期のセツ派の文書と思われる点です。この文書がどこで書かれ、のちのセツ派の文書にどんな影響を与えたのか、そしてセツ派の思想の伝統の中でどのような位置にあるのか、推測することができます。

内なる神性
 チャコス写本に含まれる4つの文書、それにナグ・ハマディ文書の大半は、いわゆるグノーシス文書と呼ばれるものです。グノーシス文書の内容は神秘主義的で、叡知を持つ人は誰もが、内に神的なきらめきを秘めていると主張します。あらゆる無知を捨て去り、自分は何なのかを認識すれば、それぞれの中に神性を見出せるというのです。これがグノーシス文書のテーマです。グノーシスとはギリシア語で知恵を意味し、グノーシス文書はこの知恵を伝えるために書かれたものです。自らをグノーシス派と呼び、グノーシス、すなわち知恵を持っている人々は、神と直接つながることができるとされていました。司祭や司教などを通す必要はありません。仲介者は無用なのです。しかし、台頭し始めていた正統派教会では、聖職者たちが大きな権力を振るっていました。グノーシス派と正統派の一部との対立の一端は、グノーシス派が独自の信条を持ったことにあります。彼らは司祭など聖職者の言葉に耳を貸しませんでした。彼らが耳を傾けたのは神の声であり、そしてその神の声は自らの内側にあったのです。












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