これから、私たちにできること-初めてのボランティアガイド-

主役は現地の人 ボランティアは黒子です 震災ボランティア連携室 企画官 田村太郎さんにきく <後編>

前回に引き続き、「震災ボランティア連携室」の田村太郎企画官に、ボランティアの始め方を伺います。今回は、実際に現地でボランティアとして活動するときに、何から始めればよいのか。また、ボランティアとして活動するときに、忘れがちなポイントを教えていただきました。

――これから現地に行って、ボランティア活動をしたいと思う人は、ボランティアを送り出す側の団体を選んで、その団体と共に行動するのが現実的です。具体的に、どういう形で、選んだらいいでしょう。

田村太郎さん(東京・霞ヶ関 震災ボランティア連携室で)

田村 いろいろな団体が、ボランティアを募集したり、現地でコーディネートをしています。公的なものでは、市町村の社会福祉協議会が運営している「災害ボランティアセンター」がありますが、ほかにも民間のNPO、NGOの拠点もありますし、連合や生協、大学なども独自にボランティアを送り出しています。こうした団体はたいていホームページを持っていますから、そこで、どんなボランティア活動をしているかが分かります。

できる限り多くの情報を収集し、「ここなら」と思う団体には問い合わせをして、説明会に参加してみることです。その団体の主催するレクチャーやオリエンテーションを受けてみれば、自分がその活動の方針に共鳴できるかどうか、その団体の展開するボランティア活動に参加する能力があるかどうかが分かります。その上で、実際に現地に行くべきかどうかを決めればいいでしょう。

また何かしなければ、と無理をすることはありません。現地に行ける人が、現地へ行けばいいのです。たとえ現地に行かなくても、被災地からの避難してくる人を地元で支援したり、被災の影響で困っている外国人のための翻訳を手伝うといったボランティア活動はいくらでも考えられます。募金をしたり、被災地の産品を買って食べたりすることを企画しても、被災地の支援になるのです。

●全国社会福祉協議会(全社協)
http://www.shakyo.or.jp/

ボランティアの力が
試される今回の震災

――田村さんは、阪神・淡路大震災、新潟中越地震の双方でボランティア活動の経験をお持ちです。その経験から見て、東日本大震災はどのように映りますか。

田村 阪神・淡路大震災と東日本大震災が決定的に違うのは、津波が来た場所と来なかった場所で、明確なラインが引けてしまうところだと思います。阪神・淡路大震災の場合は、被災の中心部に近づくにつれて、だんだん被害の程度がひどくなってくるのが実感として分かりました。道が悪くなったり、倒壊した家屋が多くなったりですね。この印象は、新潟中越地震のときも基本的に同じでした。

ところが、今回は、津波被害のあった場所の直前までは、のどかな田園風景が広がっている。そして、ある地点を越えると、たちまち目を疑うような光景が展開します。建物は流され、ビルの屋上に車がある。呆然として、その光景が現実なんだと自分に納得させるまでに、ものすごく時間がかかるというのが、私も含めて現地に行ったボランティアたちに共通した経験でした。

これは現地も同様です。先ほど述べたように、大震災のような災害時には、地元の自治体と社会福祉協議会が、災害時ボランティアセンターを立ち上げて運営し、ボランティア受け入れのコーディネイトをすることになっています。ところが今回は、自治体の職員も社会福祉協議会のスタッフも、あまりの被害の大きさに圧倒されてしまい、初期にはなかなか動きだせなかった側面もあるでしょう。目の前にやるべきことが山積みされていて、何から手を付けたらいいから分からないという時期があり、予定していたようにボランティアを受け入れる体制をつくることも難しかった。

また地域性という面でも、阪神・淡路大震災とのちがいを感じました。今回の津波の被災地は主に漁村、農村で、コミュニティーが強固です。自分たちで何とかしたいという気持ちも強かった。特に避難所にいる人たちは、多くは家族を亡くされていたり、知り合いを亡くして深く悲しんでいる人たちです。そんな場所に、多くの見知らぬ人が、ずかずかと入って来ることに対して、自分たちの感情を逆撫でされそうな危惧を感じていられたのではないでしょうか。

もっとも、阪神・淡路大震災でも、外から来たボランティアに対する反発がなかったわけではありません。例えば、被災地に「入る」という言い方がありますね。あれは、「入られる」側にすれば、決して気持ちのいい表現ではないと、私は考えています。ボランティア活動の際には、被災された方の気持ちはもちろん、地域の特徴に十分に配慮した行動が求められます。

ただ、冷静に見て、被災地の人たちだけで今回の被害に対処するのは難しい。外からのボランティアの力は必要です。ですから、ボランティアを送る側は、被災地の方の気持ちや地域性に配慮しながら、ニーズのあるところにバランス良く、ボランティアを送ることが大切なのです。非常にきめ細かいコーディネイト力が求められます。私たちボランティア連携室は、ボランティアを受け入れる側と送り込む側の双方の情報をできる限り集め、タイムリーなアドバイス、支援をしたいと考えています。

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