/2006年1月号

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特集

赤外線が明かす
宇宙の謎

JANUARY 2006

文=ウィリアム・T・ダウシット

外線で観測すれば、生まれたばかりの星や銀河の姿も鮮やかにとらえられる。最先端のスピッツァー宇宙望遠鏡の成果を紹介。

 遠い宇宙の彼方には、まだまだ多くの秘密が隠されている。普通の望遠鏡だと真っ黒にしか見えない暗黒星雲も、地球から4200万キロ離れた宇宙を飛行するスピッツァー宇宙望遠鏡ならよく見通すことができる。米航空宇宙局(NASA)が2003年8月に打ち上げた、この望遠鏡は、人間の目には見えない赤外線を利用して宇宙を観測する。自動車1台ほどの大きさしかないが、「全宇宙の約半分を観測できる」と、米アリゾナ大学の天文学者ロバート・ケニカットは説明する。

 この宇宙望遠鏡が主に観測しているのは天体が誕生する過程。恒星はガスと塵の雲から生まれ、新しい恒星を取り巻くガスや塵から惑星が誕生する。“若い”銀河も塵に包まれている。可視光ではほとんど見えないこれらの天体も、赤外線でなら観測できる。

 天体から降り注ぐ赤外線は、大半が地球の大気に吸収されてしまうため、宇宙空間から観測する方が有利となる。米国の天体物理学者ライマン・スピッツァーが、宇宙に打ち上げる望遠鏡の優位性を指摘したのは1946年。1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡などで、その説が正しいことはすでに証明されている。

 発案者の名にちなんだスピッツァー宇宙望遠鏡は、口径85センチの主鏡と液体ヘリウムで絶対零度(マイナス273.15℃)近くまで冷却する検出装置を備え、さらに観測の障害となる地球の熱から離れた軌道を回ることで、最高の感度を実現した宇宙望遠鏡だ。すでに惑星の誕生を巡る謎を解く手がかりを発見しただけでなく、太陽系外の惑星からの赤外線を検出したり、はるか遠くの若い銀河を見つけたりといった成果を上げている。

  この望遠鏡は、冷却用の液体ヘリウムが尽きる2008年頃まで運用される見込み。そしてNASAは、その後継としてスピッツァーよりはるかに大きなジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を2010年代前半に打ち上げる計画だ。「1000年後になって振り返れば、今はまさに天体物理学の黄金時代といえるのでは」と、NASAの宇宙探査技術の開発に携わる米ジェット推進研究所のチャールズ・ローレンスは言う。

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