/2006年4月号

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特集

再び脚光を
浴びる原発

APRIL 2006



原発を積極的に推進するインド

 11億人の人口をかかえ、急激な経済発展が続くインドでは、15基の原子炉が稼動していて、さらに8基を建設中だ。インド原子力省は、原発が地球温暖化を防ぐのに有効なためとしているが、原発建設を推し進めている最大の理由は、少しでも多くの電力を必要としているからにほかならない。「私たちのエネルギー政策はきわめて単純明解です。方法があるなら、できる限り発電量を増やす。これに尽きます」と、南インド最大の都市チェンナイ近郊にあるインディラ・ガンジー原子力研究センターの責任者バルデブ・ラージは打ち明けた。

 その好例が、インド南西部の海岸線から30キロほど内陸に広がる密林を伐り開いて造られたカイガ発電所だ。ここには、出力22万キロワットの加圧重水炉が2基ある。鬱蒼とした熱帯雨林の真っただ中に発電所がそびえ立つ光景は異様ともいえる。年間降水量が6000ミリ近いこの森は、絶滅危惧種の生物たちの貴重な生息地でもある。「トラなら近くにいますよ。ヒョウもキングコブラも」と、インド原子力発電公社のアンワル・シディキは語った。

 この発電所では、現在稼動している2基の原子炉のすぐそばで、新たに2基の建設が進んでいる。さらに、出力が現在の2倍にも及ぶ原子炉をさらに2基建設する計画もある。

 インディラ・ガンジー原子力研究センターの近くでは、出力50万キロワットの高速増殖炉が建設中で、2010年に発電を開始することになっているし、20年までには新たに4基が稼動を開始する予定だ。高速増殖炉では、燃えないウランをプルトニウム燃料に効率よく変換するため、発電量は格段に増えるが、そうしてできたプルトニウムが悪の手に落ちはしないかと、懸念する専門家も少なくない。

 しかし、インドの原子力エネルギー政策にこれまで他国が口を挟む余地はなかった。いくつかの例外を除けば、インドの原子力発電所はまったくの国産品で、他国からの支援を受けてこなかったからだ。

 1974年、インドは地下核実験を行ったが、その時に使用したプルトニウムは、50年代にカナダの支援を受けて建設した試験用原子炉からひそかに転用したものだった。これが原因で、インドは原子力開発の世界で孤立することになり、各国はインドに対する技術的な支援を停止した。このためインドは、自力で原子力発電所を完成させるしかなかったのだ。

 結局、インドは原子力技術のあらゆる分野で自主開発を進めていくことになる。カイガ発電所で使用するウラン燃料はコルカタ(旧カルカッタ)の西にある鉱山で産出しているし、高さ20メートル、重さ110トンの蒸気発生装置はインド南部の工場で製造できる。制御装置やジルコニウム合金製の核燃料管、それに重さ22トンに達する原子炉の部品はデカン高原にある都市、ハイデラバードから届く。  「後戻りはできません。ただ前進あるのみです」と、インド原子力省の広報担当官スワプネシ・マルホトラは力説する。「エネルギーがなければ生活できません。どうにかして、手に入れるしか道はないのです」

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