/2005年3月号

トップ > スペシャル > 地球からの警鐘 > 日本の外来種




特集

侵略的外来種 日本編

MARCH 2005



マイクロチップでネコを管理

 山階鳥類研究所の2003年の調査によると、ヤンバルクイナの生息地域は85年に比べて40%減ったという。生息数は2000年時点で約1220羽と推定されている。

 減少の原因の一つに挙げられているのが、マングースやネコによる捕食だ。沖縄のマングースは1910年、ハブを退治するために持ち込まれたが、夜行性のハブに対しマングースは昼行性のため出合うことが少なく、むしろ絶滅が危ぶまれる在来生物を食べることが分かった。また、飼いネコが野生化して在来の生物を脅かすことも明らかになった。

 飼いネコの野生化を抑制するため、沖縄県の国頭、東、大宜味の3村は2004年、飼い主の情報を記録したマイクロチップを飼いネコに埋め込むことを義務付けた。野生化したネコやマングースの捕獲も、沖縄県や環境省が中心になって進めているが、ヤンバルクイナの減少を抑えるにはまだ時間がかかりそうだ。

 日本本土の外来種で、研究者が危機感を募らせるのが北米原産のアライグマだ。70年代に放映されたテレビアニメがきっかけでペットとして人気を集め、多い時は年間1500頭が輸入されたという。ところが、アライグマは警戒心の強い動物で、生まれて1年くらいまではおとなしいが、成長すると時に凶暴になることがある。それが捨てられるか、逃げ出すかして繁殖した。野生化したアライグマは急増し、すでに全国42都道府県で確認されている。

 神奈川県でアライグマの調査をしている金田正人さんの案内で葉山町の山あいを歩くと、この動物の糞や足跡が見つかった。アライグマは夜行性のため、センサー付きのスチルカメラを数カ所に設置し、生息状況を調査している。「カメラに写った動物の70%ほどがアライグマ」だという。

 2000年以降は狂犬病予防法の対象となったため、 ペットとしての輸入は途絶えているが、いったん日本の森にすみかを見いだしたアライグマは着々とその生息範囲を広げている。

 なかでも北海道や神奈川県、大阪府などで大きな問題になっている。北海道では主に酪農地帯での農業被害が目立つ。トウモロコシやメロンなどの畑が荒らされ、年間3000万円の被害が出ている。神奈川県鎌倉市では95年頃から民家の屋根裏にすみついたり、ゴミを荒らして住民に被害を及ぼす例が増えた。

 神奈川県では2003年度に約900頭、北海道でも約1200頭のアライグマを捕獲したが、その引き取り手がなく、ほとんどは殺処分されている。動物愛護団体は、「人間の都合で持ち込まれ、そして殺される」として反発する。神奈川県動物愛護協会では、捕獲された幼いアライグマを引き取って“里親”探しをしているが、その数は年間10数頭がやっとだ。

 アライグマ問題を引き起こしたそもそもの原因は、「ペットの安易な遺棄」だ。全国の池や川で目にするミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)も、元々はペットとして飼われていた。2003年に日本自然保護協会がカメの生息アンケートを全国で行ったところ、野外で6000頭近く見つかったカメのうち、60%以上がこのカメだった。

 最近、クワガタムシやカブトムシのペットが急増している。99年に、それまで「植物防疫法」によって禁止されていた外国産のクワガタムシやカブトムシの輸入が解禁された。以来、クワガタムシは360種以上が輸入されるようになった。輸入量は年間100万匹とも200万匹ともいわれる。この生物を繁殖させることが愛好家の楽しみとなっていて、飼育下でどんどん増えている。野生下で外来のクワガタムシが発見される例も多くなっているようだ。

 ペットだけではない。上海ガニの名で知られるチュウゴクモクズガニは、中華食材として生きたまま大量に輸入されているが、実は影響の大きい外来種だ。欧米では、巣穴を掘って川岸を崩壊させたり、漁業被害も与えるという。日本でも東京湾で生きた個体が発見されたほか、山形県などでは休耕田を使った養殖が始まっている。逃げ出して増える可能性もある。

 ペットや天敵、食用、緑化用として、あるいは意図しないかたちで、様々な生物が持ち込まれ、野に放たれている。それらのツケが今、外来種問題として表れているのである。

 最近になってようやく、外来生物を日本に持ち込むと、どんな影響があるのか、少しずつだが科学的な知見が蓄積されるようになってきた。そして、影響の大きい生物に対する法規制が始まろうとしている。

 2003年に成立した「外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」が、いよいよこの6月から施行される。この法律は、侵略的外来種のなかでも、緊急に対策が必要な生物を「特定外来生物」として指定し、(1)それらの生物を国内に持ち込ませない、(2)持ち込む場合は野生化しないよう管理する、(3)すでに野生化しているものは駆除する、の三つの柱で規制する。現在、その特定外来生物の選定作業が大詰めの段階で、最初はアライグマやマングース、グリーンアノールなど37種類が指定される見込みだ。

Back3/6 pagesNext


ナショナル ジオグラフィック バックナンバー