「70億人の地球」を読み解く

日本は技術で環境問題解決に貢献すべき東京はダントツの世界一の都市になれる

慶應義塾大学総合政策学部 教授 グローバルセキュリティ研究所 所長 経済学博士  竹中 平蔵 氏

世界の人口は、あと30年あまりは増え続けると予測されている。その間、食料や資源の需要を賄えるのか。地球環境はどのようになってしまうのか。歴史上、最大に膨れ上がる人類を、この星は支えられるのか。ナショナル ジオグラフィック日本版1月号では、人口研究の歴史的背景と、インドで行われている人口抑制策、人口増による食料や資源、都市問題、社会問題などの展望を概観した。その最初の解説者として、著名な経済学者であり、また経済財政政策担当大臣などを歴任し、世界情勢に通じた竹中平蔵氏に人口問題の捉え方や日本の役割などを聞いた。後編では環境問題に端を発し、水問題、都市問題、さらに日本の少子高齢化に話は及んだ。

――人口が増え続ければ、水やエネルギーの使用量も増えます。持続可能な社会実現のための課題である「地球環境問題」で、日本はどういう貢献ができるのでしょうか。

竹中日本が環境問題で一番貢献できるのは、CO2の排出を削減する技術の提供です。現在、日本がGDP 1単位を生み出すCO2の排出量は、欧州や米国の2分の1、インドや中国の9分の1にすぎません。圧倒的に効率がいい。これは、日本の環境技術を世界に適用すれば、世界のGDPを維持しつつ、排出するCO2が3分の1に低減できるということを意味しています。これを活かさない手はありません。
 もうひとつ、日本には“もったいない”という文化があります。食べ物や洋服など、いろいろなものを大切にするこのライフスタイルが、環境負荷の低減にも結び付いています。しかし実際には、国際会議などで「日本企業はCO2のキャップ&トレードに積極的ではない」などと非難されている。日本はアピールするのが下手だと痛感するのですが、先進的な省エネ技術と“もったいない”文化で、世界に貢献できるはずです。

――環境に関連するものに、水問題があります。アジアやアフリカでは「きれいな水が飲めず伝染病に」という話も聞きますし、食糧の増産にも水は欠かせません。

竹中水の問題には、CO2の問題とは違った一面があります。水はグローバルな問題でありながら極めてローカルな対策で取り組まねばならないことです。東京の水をいくらきれいにしても、中国の水がきれいになることはありません。人口問題、環境問題に水問題が深く関わっているのは事実ですし、工業化が進めば水の使用量は増大します。水問題についてどのように取り組み、解決の手を打つのか、きちんと議論しなければなりません。

――ナショナル ジオグラフィックの特集「70億人の地球」では、ロンドンやラスベガス、カラカスなどの写真を掲載しながら、エネルギーと都市、住宅の問題も取り上げました。

竹中環境問題の解決策として「都市化」を忘れてはならないと思います。交通インフラを整備することによって、移動や物流の効率が上がります。住宅も戸建てを集約して高層ビルにすれば、建物の表面積が減少し、冷暖房の効率が上がります。都市化することによって、環境負荷を低減できるのです。もちろん都市化には災害やテロに対する備え、犯罪を防止するための手立てといった負の面への対策が必要なことも事実です。しかし、全体として見れば省エネや利便性などプラス面の方が大きいはずですし、そういう波及効果を評価すべきです。
 トロント大学で都市社会学を専攻しているリチャード・フロリダが、衛星から撮った地球の夜の写真を基に、「地球は20~30の光の塊『メガリージョン』(=大都市圏)でできている」と言いました。このプロジェクトも“可視化”したもののひとつですが、ナショナル ジオグラフィックでも、この特集を組めば面白いと思います。衛星写真から見えた、最大のメガリージョンはどこだと思いますか。それは、東京圏でした。2番目がボストンやニューヨークなどの米国の東海岸地域です。そして光の量をGDPに換算したところ、東京圏と米国の東海岸地域を合算したものは、ドイツをしのいでいたのです。
 海外から帰って来るたびに、「東京はきれいな都市だ」と実感します。東京圏には3000万人が住んでいますが、どこの都市よりも空気、水がきれいで、交通渋滞も少ない。これは世界に誇るべきことです。2年前に森記念財団が発表した「世界の都市総合力ランキング」では、「1位ニューヨーク、2位ロンドン、3位パリ、4位東京」でした。東京への不満としては「英語が通じない」「空港が遠い(アクセスが悪い)」「規制が多い」が挙げられています。空港のアクセスをシンガポール並みにし、規制をロンドン並みにすれば、東京は環境的にも経済的にもダントツの世界一の都市になるはずです。(2011年2月取材)

※このページはNECが運営するビジネス情報サイト「wisdom」との共同企画として、ナショナル ジオグラフィックが1年間追い続ける「70億人の地球」を解説するページです。 続きは、下記をクリックいただき、「wisdom」ページでお楽しみ下さい。なお、「wisdom」は会員登録(無料)を必要とします。

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