「70億人の地球」を読み解く

人口問題は貧困や食糧の問題に直結する 企業も個人も「生活改善」支援の活動を

慶應義塾大学総合政策学部 教授 グローバルセキュリティ研究所 所長 経済学博士  竹中 平蔵 氏

世界の人口は、あと30年あまりは増え続けると予測されている。その間、食料や資源の需要を賄えるのか。地球環境はどのようになってしまうのか。歴史上、最大に膨れ上がる人類を、この星は支えられるのか。ナショナル ジオグラフィック日本版1月号では、人口研究の歴史的背景と、インドで行われている人口抑制策、人口増による食料や資源、都市問題、社会問題などの展望を概観した。その最初の解説者として、著名な経済学者であり、また経済財政政策担当大臣などを歴任し、世界情勢に通じた竹中平蔵氏に人口問題の捉え方や日本の役割などを聞いた。

――日本は少子高齢化が進んでいますが、世界の人口は2011年に70億人、2045年には90億人を超えるといわれます。それは貧困、食糧、環境などの問題に直結します。

竹中まず、人口問題に限らず、食糧・水・資源・貧困・環境などの問題は、“グローバルアジェンダ”(地球規模で解決を要する問題)として捉える必要があります。先日出席したダボス会議でも話題になりましたが、IMF(国際通貨基金)、国連、FAO(国連食糧農業機関)やG7~G20など国レベルの取り組みだけでは解決できないからです。それらを克服するには、企業や個人、我々一人ひとりが、マルチステークホルダーとして取り組まなければなりません。またこれが、頭では理解していても、実際の行動に結びつけるのは難しい問題であることも実感しています。
特に人口問題には、“可視化”しにくいので、「何が問題なのか」捉えることが難しい一面があります。しかし、今回のナショナル ジオグラフィックの特集は、それを上手に“可視化”しており、感心しました。人口増が著しいインドや中国などの写真とともに、国連の統計を基にした世界の人口推計や消費動向を図表化し、分かりやすくしてあることです。この企画は、グローバルアジェンダを「我々の生活に密着した問題なのだ」と考えさせる良いプロジェクトだと思いますし、今後、環境問題、さらには金融問題などへと展開していってほしいと思います。

――人類は地球温暖化など様々な問題を抱え込んでしまったわけですが、まず人口問題についてはどのように理解し、どのように取り組めばいいのでしょうか。

竹中人口そのものが「資産」か「負債」かという議論がありますが、両面からきちんと捉える必要があります。経済開発学者のラグナ―・ヌルクセの「人口が多ければ賃金が安くなり、所得が低いので貯蓄ができず、より貧困に陥る。つまり貧困の悪循環をきたす」というのが、負債として捉えた典型的な例です。その一方、日本では「経済成長のためには働き手が必要だ」と、資産として考えています。そこで不可欠なのは70億人を、というより、それぞれの国を豊かにする経済政策です。
 経済学的に振り返ってみれば、1776年にアダム・スミスは『国富論』で「見えざる手によって経済は発展していく」というバラ色の世界観を描きました。これに対し、1798年にロバート・マルサスが『人口論』で「幾何級数的に増加する人口と算術級数的に増加する食糧の差は、人口過剰すなわち貧困を発生させる。この現象は不可避であり、社会制度では回避することはできない」と主張しました。マルサスの「人口過剰=貧困」のロジックは単純で分かりやすく、非常に強い影響力を持ちました。 しかし、現実にはそうはならなかった。それはなぜでしょうか。1つは、技術進歩が予想以上に大きかったことです。「緑の革命」によって農業分野の生産性が向上したことなどです。もう1つは、人間の「もっと豊かになりたい」という欲求です。もっと豊かになるために、子供に高い教育を受けさせようとします。教育には経済的な余裕が必要なので、子供の数を絞るようになるのです。その結果、出生率が低下します。敗戦直後の日本と現在の日本、また現代の日本では都道府県別の平均年収1位の東京と47位の沖縄との比較などから、この説は裏付けられると思います。
(以下続く)

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