2011年 シリーズ企画 70億人の地球

第1回 「人口急変で、日本は混乱の時代に」石弘之
第1回は北京大学客員教授で、環境問題研究者の石弘之氏に、人口の変化にともなって日本にこれから起こる問題を挙げてもらった。石氏は新聞記者時代からこれまで世界約130カ国を訪れ、人類が地球環境に与えるインパクトについて調査報告してきた。「人口の急激な変化が様々な混乱を招く」と語る。
(インタビュー、文=福光恵)

2000万人を抱える都市圏、メキシコ市
(3月号「人類の時代」より)

Credit: PABLO LOPEZ LUZ

(5) 世界の人口増が日本に打撃

 少子高齢化による災難が、老人たちに容赦なく降りかかるなか、世界の人口増による弊害もまた、日本に及んでくる。資源不足だ。

 とくに日本にとって問題となるのは食料。現在より、さらに22~23億人の人口が上乗せされると予測されている2050年。これだけの人口を地球上の食料がまかなえなくなり、食料不足が加速することは、簡単に想像できる。

 「増産すればするほど、土地は痩せ、自然と農地は減っていく。また世界の人口も増えている以上、農地の不足は起こるでしょう。加えて気候も不安定期に入ったと言われるほど、不順。さらに現在の食料は石油でできているといっても過言ではない。たとえば1kcalのトマトを作るために、使う石油は70kcal。食料が減っていけば、石油や水なども減り、エネルギー危機と食料危機が隣り合わせでやってくる」

 しかも日本の自給率は40%と低水準を続けている。農業人口は減少し、農業適地も少ない。さらに、福島第一原発の事故による放射線被害という大きな災難が、日本の第一次産業にも降りかかろうとしている。そんな状況を考えると、食料自給率の上昇は、夢のまた夢のようにも思える。

 「主要国の中でも、もっとも食料について危ない立場にいるのが、日本。飢餓は生まれないにしても、価格の高騰は起こるでしょう。それでなくても資金不足の病院や福祉施設などを真っ先に、食料難の波が襲うかもしれません」

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特集より

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70億人の地球 (本誌1月号)

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