2011年 シリーズ企画 70億人の地球

第1回 「人口急変で、日本は混乱の時代に」石弘之
第1回は北京大学客員教授で、環境問題研究者の石弘之氏に、人口の変化にともなって日本にこれから起こる問題を挙げてもらった。石氏は新聞記者時代からこれまで世界約130カ国を訪れ、人類が地球環境に与えるインパクトについて調査報告してきた。「人口の急激な変化が様々な混乱を招く」と語る。
(インタビュー、文=福光恵)

日本のスーパーで行われた
ヘルパーロボットの実験
(1月号「70億人の地球」より)

Credit: RANDY OLSON

(4) 人口ピラミッドがひずみ、
   超高齢化社会に

 「人口爆発が引き起こすもうひとつの大きな問題は、人口分布の年齢差のギャップが広がること。年代別の人口に大きくバラツキが出て、人口ピラミッドが不自然に歪んでしまう状態です。これは、現在起きているアラブ争乱の大きな引き金になったと考えることもできます」

 ピラミッドという名前からもわかるように、これまで人類の人口分布は、出生時が一番多く、そこから年齢とともに死亡者が増え、徐々に人口が減っていく三角形をなすのが普通だった(図1)。ところが人口が激増している途上国では、当然、ピークが若年層にかたよる。つまり10代20代の若者が、人口の多くを占める社会となってしまう。

図1
図2
1月号「70億人の地球」より

「ユースバルジ」

 そう呼ばれる人口ピラミッドの型がある(図2)。バルジとは、ボートの膨らんでいる部分のこと。つまり「ユースバルジ」とは、人口ピラミッドで、「若年層(ユース)」が、「バルジのように膨らんでいる」状態を指す。

 「血気盛んな若者が増えれば増えるほど、必ずや政治や世の中が不安定になってきます。まさに日本では1950年、60年の安保闘争がその時期だった」

 またアフリカなどの途上国でも、教育を受けたインテリ層が増えている。高学歴なのに仕事が見つからない。そんな不満を政治にぶつけて、今度は自分がリーダーになる番だと考える若者も増えている。

 「野党勢力が膨らみやすいんです。さらに今の若者たちは、情報機器を手に入れたことで、SNSなどで集団としてのネットワークを作りやすい。アラブの争乱は、こうした人口問題が、隠れた背景になっている」

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特集より

少子化とメロドラマ (本誌9月号)

50年間で出生率が3分の1になったブラジル。女性たちが「産まない」決断をしていった背景には何があるのか。メロドラマが一役買ったというが……
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食の未来を守る (本誌7月号)

増え続ける人口を支えるには、食料の増産が欠かせない。だが、限られた品種を大量生産する、これまでの農業に頼っていていいのか。作物の“多様性”を守る必要がある。
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沈む国土に生きる (本誌5月号)

人口が増え、国土が水没しつつあるバングラデシュをレポート。これは対岸の火事ではない。近い将来、世界の人々が直面するかもしれない問題なのだ。
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中生代は恐竜の時代、新生代は哺乳類の時代と言われるが、今や「人類の時代=人新世」であるという意見が学界でも強くなっている。人間が未来の地球に残す爪跡とは。
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70億人の地球 (本誌1月号)

2011年に70億、2045年に90億に達する人類。その数と欲望を、地球は支えていけるのか。世界の人口の動向とその抑制のための努力を取材したシリーズ第1弾
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