2011年 シリーズ企画 70億人の地球

第1回 「人口急変で、日本は混乱の時代に」石弘之

(3)つづき

 都市、と聞いて、先進国ではビルが建ち並ぶ近代的な町を想像するが、途上国ではイメージが違う。たとえばアフリカもインドもパキスタンもインドネシアも南米も、都市のいたるところにすさまじいスラムがある。

 「途上国の場合、都市化というのはイコール、スラム化なんです。教育のチャンスもない、犯罪が多い、不衛生……と、都市は住むのに決して快適なところではない。だが、農村人口がめいっぱいになり、扶養する力がなくなってくると、人々は都市にあふれていくしかないんですよ」

 都市に行けば、「一種のジョブシェアリング」が起きていて、誰でも何らかの仕事にありつける。たとえば煙草一箱を売るしても、金持ちの煙草売りはカートンで売り、つぎに金持ちの煙草売りはそれをばらして1箱ずつ、1本ずつ売り、最終的に貧乏な煙草売りは、吸い殻を拾って売る。煙草だけで何種類もの職ができるのだ。

 女性の場合は、ホームヘルパーやシッターの仕事がある。店番などの雑役もある。
「それでも生活できない場合は、強盗やかっぱらいに手を染めたり、女性の場合は、セックスワーカーになるケースも少なくない。都市は危険な場所になり、その結果、ボディガードや警備員などの仕事も生まれる。そんな悪循環のなかで、何らかの仕事にありつける都市に、人々が集まってくる。それが途上国のスラム化した都市、そして過密のメカニズムなんです」

(4)「人口ピラミッドがひずみ、超高齢化社会に」へ

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石 弘之(いし ひろゆき)

1940年生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞社編集委員を経て、国連環境計画(UNEP)上級顧問、東京大学大学院教授、駐ザンビア特命全権大使、北海道大学、北京大学客員教授などを歴任。著書に、「名作の中の地球環境史」(岩波書店)、「地球環境“危機”報告」(有斐閣)、「地球環境の事件簿」(岩波書店)、「火山噴火・動物虐殺・人口爆発」(洋泉社)など。
福光 恵(ふくみつ めぐみ)

1960年東京都生まれ。美術業界で働いたのち、フリーライターに。日経新聞プラス1「コトバの鏡」、アスキードットPC「自腹で大人買い」などの連載あり。

特集より

少子化とメロドラマ (本誌9月号)

50年間で出生率が3分の1になったブラジル。女性たちが「産まない」決断をしていった背景には何があるのか。メロドラマが一役買ったというが……
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食の未来を守る (本誌7月号)

増え続ける人口を支えるには、食料の増産が欠かせない。だが、限られた品種を大量生産する、これまでの農業に頼っていていいのか。作物の“多様性”を守る必要がある。
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沈む国土に生きる (本誌5月号)

人口が増え、国土が水没しつつあるバングラデシュをレポート。これは対岸の火事ではない。近い将来、世界の人々が直面するかもしれない問題なのだ。
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酸性化する海 (本誌4月号)

人間が大気中に排出した二酸化炭素は、やがて海に吸収され、生き物が生息しにくい環境をつくる。100年後、果たしてサンゴやウニは生きていられるのだろうか。
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地球を変える「人類の時代」 (本誌3月号)

中生代は恐竜の時代、新生代は哺乳類の時代と言われるが、今や「人類の時代=人新世」であるという意見が学界でも強くなっている。人間が未来の地球に残す爪跡とは。
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70億人の地球 (本誌1月号)

2011年に70億、2045年に90億に達する人類。その数と欲望を、地球は支えていけるのか。世界の人口の動向とその抑制のための努力を取材したシリーズ第1弾
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