2011年 シリーズ企画 70億人の地球

第1回 「人口急変で、日本は混乱の時代に」石弘之

(1)つづき

 とはいえこの人口爆発という言葉に、リアリティを感じない日本人は多い。日本では世界の人口増加をよそに、少子化が加速。人口は爆発どころか05年から減少に転じている。そんな日本の「人新世」では、何が起こるのか? 本誌記事「シリーズ70億人の地球」に合わせ、各界の専門家とともに、世界、そして日本の人新世について探っていく本シリーズ。第1回は、環境問題研究者の石弘之氏に聞いた。

 「現在、人類はひとりあたり2.2ヘクタールの土地を使い、野菜を作り、道路を造り、家を建てるなどしている。実は地球側から計算するとひとりあたり1.7ヘクタールがせいぜいとされる。地球側からみると、利用過剰状態なんですね」

 地球が受ける70億人という人類の重圧。それはときに自然災害という形でもあらわれる。本来、「神の領域」とされ、人が使ってはいけない土地が、地球上には数多くあった。ところがふくれあがった人類は、やがて山を切り開き、そうした場所にも住まざるをえなくなる。ひとたび天変地異が起これば、地球が受けた重圧は、大きな自然災害の被害となって跳ね返ってきてしまう。

 「一見、人口が減少している日本は、世界の人口増加傾向に逆行する、特別な道を歩んでいるように見えるかもしれない。でも実はこれこそが、おそらく先進国の多くが、近い将来たどる道なんです」

 石氏はそう話す。たとえば、あれだけ人口増加に悩まされた中国も、一人っ子政策が成果を上げて、2030年前後には一転、少子高齢化が大きな問題になると言われる。つまり日本は世界のなかで、少子高齢化の先頭を走っている国といっていい。

 「そのため、今後日本がどんな方策で、少子高齢化が引き起こすさまざまな問題をクリアしていくのか。これをジャパンシンドロームと呼んで、世界中が注視している。実際、少子高齢化が進んでいる地域の自治体やNPOなどには、ヨーロッパからの視察が、あとをたたない」

 世界も注目するほど極端な曲線を描く、少子高齢化という日本の人口ピラミッド。それはこうして起こった。

(2)「急ブレーキがかかった人口過剰社会」へ

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石 弘之(いし ひろゆき)

1940年生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞社編集委員を経て、国連環境計画(UNEP)上級顧問、東京大学大学院教授、駐ザンビア特命全権大使、北海道大学、北京大学客員教授などを歴任。著書に、「名作の中の地球環境史」(岩波書店)、「地球環境“危機”報告」(有斐閣)、「地球環境の事件簿」(岩波書店)、「火山噴火・動物虐殺・人口爆発」(洋泉社)など。
福光 恵(ふくみつ めぐみ)

1960年東京都生まれ。美術業界で働いたのち、フリーライターに。日経新聞プラス1「コトバの鏡」、アスキードットPC「自腹で大人買い」などの連載あり。

特集より

少子化とメロドラマ (本誌9月号)

50年間で出生率が3分の1になったブラジル。女性たちが「産まない」決断をしていった背景には何があるのか。メロドラマが一役買ったというが……
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食の未来を守る (本誌7月号)

増え続ける人口を支えるには、食料の増産が欠かせない。だが、限られた品種を大量生産する、これまでの農業に頼っていていいのか。作物の“多様性”を守る必要がある。
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沈む国土に生きる (本誌5月号)

人口が増え、国土が水没しつつあるバングラデシュをレポート。これは対岸の火事ではない。近い将来、世界の人々が直面するかもしれない問題なのだ。
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酸性化する海 (本誌4月号)

人間が大気中に排出した二酸化炭素は、やがて海に吸収され、生き物が生息しにくい環境をつくる。100年後、果たしてサンゴやウニは生きていられるのだろうか。
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地球を変える「人類の時代」 (本誌3月号)

中生代は恐竜の時代、新生代は哺乳類の時代と言われるが、今や「人類の時代=人新世」であるという意見が学界でも強くなっている。人間が未来の地球に残す爪跡とは。
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70億人の地球 (本誌1月号)

2011年に70億、2045年に90億に達する人類。その数と欲望を、地球は支えていけるのか。世界の人口の動向とその抑制のための努力を取材したシリーズ第1弾
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  • ビデオ 3分でわかる「70億人の地球」
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