国際的に活躍できるドキュメンタリー写真家を発掘し、日本から世界へ送り出したい。そんな願いを込めて創設された日経ナショナル ジオグラフィック写真賞。その第1回の受賞作品が、写真家の野町和嘉氏と中村征夫氏、ティム・レイマン氏、日本版編集長の大塚茂夫による審査で決定した。
応募者の数は、ネイチャーとピープルの両部門合わせて696人。合計1951点の作品のなかからグランプリ1点のほか、部門ごとに最優秀賞を各1点、優秀賞を各4点選出した。
グランプリに選ばれたのは、ウガンダの密林で古木の根に座るチンパンジーの姿をとらえた、前川貴行さんの作品。前川さんには、賞金・賞品のほか、米国ニューヨークの写真ギャラリー「スティーブン・キャッシャー・ギャラリー」で個展を開催するチャンスが与えられる。
日経ナショナル ジオグラフィック写真賞2012のグランプリ受賞者
前川貴行氏の個展が2013年6月13日から6月29日まで米国ニューヨークの「スティーブン・キャッシャー・ギャラリー」にて開催されます。
【 審査員講評 】
野町 和嘉(写真家) グランプリの「密林のチンパンジー」は、さりげなく撮っているように見えるが、鋭い観察眼が要求される高度な作品だ。ネイチャー部門最優秀賞「海からの伝言」も光を読み込む優れた観察力がなければ撮れない作品。ピープル部門では被写体に肉薄した作品が少なかったのは残念だが、最優秀賞 「チベット族」は、人の表情を出さないことで祈りの深さを効果的に表現している点を評価した。 |
中村 征夫(写真家) ピープル部門の題材は大半が海外だったが、ネイチャー部門は日本の自然をとらえたものが多く、総じてこの国の美しさを再認識した。「密林のチンパンジー」には適度な間合いがあり、画を故意に作ろうとしない、さりげなさに好感がもてた。濃密な両者の時間の流れが伝わってくる。「チベット族」は、余計なものを排除した構図がさすが。「なぜ今カメラを向けているのか」を常に考えて撮ると良い。 |
ティム・レイマン(写真家) 熱帯雨林で野生動物の姿をくっきりと写し出すのは難しい。「密林のチンパンジー」はこの点を鮮やかにクリアし、板根の曲線や被写体の表情が叙情的な印象を与える作品となっている。「海からの伝言」は光の扱いが巧み。強さという観点では粒のそろった4点の組み合わせもいい。ピープル部門最優秀賞「チベット族」は要素の取捨選択や画面構成に、写真家に必須の「独自の視点」を感じさせる。 |
大塚 茂夫(日本版編集長) グランプリ作品を見たとき、「チンパンジーさん、そこに腰掛けて」とでもお願いしたような不思議さを感じた。奥行きのある“ 舞台”の中央で、ぽつんとたたずむ動物。被写体とのちょうど良い距離感が静かな雰囲気を作り出している。 両部門の最優秀賞に組写真が輝いた点も特筆したい。両作品は、写真1枚1枚の強さに加え、テーマを伝えるための写真選択と構成力が秀逸だ。 |
【 特別協賛 】
キヤノンマーケティングジャパン株式会社
【 協賛 】
ビー・エム・ダブリュー株式会社、
マンフロット株式会社、
株式会社モンベル、
株式会社ナナオ、
サンディスク株式会社、
凸版印刷株式会社
【 後援 】
公益社団法人日本写真家協会、
日本自然科学写真協会、
日本旅行写真家協会、
WWFジャパン、
日本野鳥の会、
NPO法人フォトカルチャー倶楽部、
クラブツーリズム株式会社