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失われた楽園 クリミア

APRIL 2011

文=キャシー・ニューマン/写真=ゲアード・ルドウィッグ

海に突き出たクリミア半島。現在はウクライナ領だが、さまざまな民族や帝国に支配されてきた複雑な歴史が、住民たちの生活に影を落としている。

 黒海北部に突き出たクリミア半島。ゴート族、キエフ大公国、モンゴル帝国、オスマン帝国……有史以来、この半島はさまざまな民族や帝国による侵入と占領の舞台となってきた。そして1783年、ロシア帝国のエカテリーナ2世はクリミアを併合する。女王の愛人だったポチョムキン将軍が、温暖な気候と一年中凍結しない港があるこの地を“楽園”と呼び、欲しがったためともいわれる。

 70年近いソ連時代を経て、クリミアは現在、ウクライナ内の自治共和国となっている。しかし、複雑な歴史が複雑な影を半島に落としてもいる。自治共和国で多数派を占めるロシア系住民はウクライナの一部であることに居心地の悪さを感じ、ウクライナ系住民はロシアの影響力を排除したいと願っている。さらに、第二次世界大戦中に中央アジアに強制移住させられた経験をもつ26万人ほどのタタール系住民は祖先の土地を取り戻せないまま、生活に窮している。

 ポチョムキンが憧れた楽園は失われたのか。さまざまな背景をもつ住民たちの思いを通して、半島の現実を見つめる。

 今回の特集は、ソ連時代の砂糖やバターの価格の安さを懐かしむウクライナのおばあちゃんが主人公。平成国際大学の末澤准教授にお尋ねしたところ、貨幣価値が暴落したので単純比較はできないものの、やっぱりソ連の物価は相当安かったみたい。例えば80年代半ば、1ルーブルが280円の時代に、地下鉄はどこまで行っても5カペイカ(当時の相場で14円)だったとか。イデオロギーとは別の次元で「なんで独立しちゃったのさ」と嘆く一般市民の気持ちもわかるというもの。東欧の民族問題は複雑で、シベリアの空のようにどんよりしています。そんな中、P117の「泡パーティー」に興じる若者たちのはじけっぷりが唯一の救い。彼らの世代がまったく違う社会を作ってくれることに期待したいですね。(編集H.O)

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