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アヘン撲滅作戦

FEBRUARY 2011


撲滅作戦に同行

 収穫期のある朝、キントゥズはバダフシャーン州のアルグー県でケシ畑の強制除去を実施することにした。その2日前には、麻薬対策部隊の9人が、道路脇に仕掛けられた爆弾で命を落としたばかりだ。

 私たちを乗せた車列は、夜明けに州都フェイザーバードを出発した。道路脇には比較的新しい民家が並んでいるが、撲滅作戦が始まってからは、こうした家の新築は止まった。

 アルグー県に続く14キロの道は、ひどい状態だ。この道路は米国の業者が2億円余りかけて再舗装工事をしたが、今の状態は工事前よりも悪い。県の中心部に入り、数十軒の店の前を通った。かつては麻薬を公然と売っていた店だが、今はどこも閉まっている。村人たちが、私たちの車列をにらみつける。

 アルグー県の中心地から数キロ、バルラースという村の近くで、麻薬対策部隊は車を降りた。30人ほどの武装した警官たちが、徒歩で丘陵地帯に入り、目的のケシ畑を探す。

 現場に着くと、けばけばしい色をしたケシ畑が至る所にあった。それぞれの区画の広さはせいぜい40アールほどだ。警官たちは竹の棒を持って畑に入り、棒を乱暴に振り回して、ケシの花をたたき落としていく。キントゥズも部下たちの作業に加勢する。つぶし終わった畑では、国連薬物犯罪事務所の検査官が丹念に状況を記録していく。

 近くの畑では、若い農夫がしゃがんで取り締まりの様子を見ていた。

 「あそこは隣人のイスライルの畑だよ」と彼は言う。「警察の手入れがあるのは知っていたと思うけれど、自分の畑がつぶされるのを見たくなかったんだろうね。去年、警察からケシを植えるなという警告があった。だから、うちはメロン栽培に切り替えたんだが、ここは雨水が頼りなんだよ。もし日照りが続いたりしたら、大変なことになる」

 米国国際開発庁をはじめとする欧米の援助機関は、ケシ栽培をやめさせるために何億円もの資金をバダフシャーン州につぎ込んでいる。この援助の恩恵を受けているかどうか、この若い農夫に尋ねてみた。「政府は、小麦の種と肥料を提供すると県知事に約束した。でも、届いていないんだ」

 近くのタシュカン県で会った老人も、同じような話をしていた。「『道路や橋や運河を造ってやろう。そうすればケシのことなんて忘れてしまうぞ』と政府に言われましたよ。5年前のことです。でも、何もしてくれません」

 公平を期すために補足しておくと、いくつかのことはやった。フェイザーバードと首都カブールを結ぶ舗装道路を新たに建設し、タシュカンで道路建設事業を進め、バハラックではサフラン農場を造ったほか、州内の18カ所に県警察署を新設した。

 だが、こうした援助が、広大なバダフシャーン州の隅々まで行き渡っているわけではない。たとえば、ヤムガン県のサラーブ村は診療所がないため、村民は唯一の“薬”である麻薬に頼り、1800人の住人のうち半数が依存症になっている。また、アルグー県のドゥガラート村では、崩れかけた校舎で、数百人の子供たちが狭い教室に押し込められ、土間に座って授業を受けている。この校舎を建てる原資となった麻薬取引の金は、ケシ畑撲滅作戦のために底をついた。さらに、バダフシャーン州の農業事業のために投入された米国市民の税金は、ある麻薬対策官の証言では、「現地にまったく届いていない。消え失せた」という。

密売人との“黒い”関係

 警官隊は、ある未亡人の所有するケシ畑に移動した。この女性は、亡き夫が育てたケシがたたき落とされる様子を泣きながら見ていた。

 女性の夫はソ連軍に抵抗したムジャヒディン(イスラム系反政府ゲリラ)の元メンバーで、その後もアフガニスタン政府軍の兵士としてタリバンと戦っていたが、数カ月前、道路脇の爆弾に吹き飛ばされて命を落としたという。

 除去が終わった畑をいくつか見て回ると、ケシの果実に傷がついている畑があることに気づいた。警察がやって来る前に、農家がケシの乳液を採取したことを示す動かぬ証拠だ。中にはケシがそのまま残っている畑もある。単なる見落としだろうか。それとも、誰かが賄賂(わいろ)を受け取ってわざと見逃したのか。

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