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羽はどうやって
できたのか?

FEBRUARY 2011


 この筋書きは1970年代に入って説得力を失った。古生物学者のジョン・オストロムが、獣脚類(じゅうきゃくるい)と鳥類の骨格が驚くほど似ていることを明らかにしたからだ(獣脚類は恐竜の1グループで、ティラノサウルスやベロキラプトルが属している)。鳥類が獣脚類の子孫であることは疑う余地がないと、オストロムは主張した。獣脚類の恐竜の多くは、長い後肢と短い前肢、頑丈な長い尾をもっている。その解剖学的な特徴から見て、木から木へ跳び移っていたとは到底考えられない。

 1996年に中国の研究チームが、オストロムの仮説を裏づける強力な証拠を発表した。1億2500万年前のものとみられる、前肢の短い小型の獣脚類シノサウロプテリクスの化石だ。この化石には注目すべき特徴があった。中空の繊維状の組織が、背中と尾を覆っていたのである。地上を走る獣脚類が原始的な羽毛をもっていたということだ。それは言い換えれば、羽の起源と飛行の起源は必ずしも重なり合わないことを意味している。

 その後、羽毛をもつ獣脚類の化石は次々に発見され、羽の進化の歴史がだんだん詳しくわかってきた。最初に単純な繊維状の構造が生まれ、そこから獣脚類のグループごとに、多様な羽毛が進化したようだ。今の鳥のふわふわした綿羽(めんう)のような羽毛もあれば、中心の軸から左右対称に羽枝がはえたものもあった。

獣脚類に見られる、中空の長い繊維は、一つの謎を投げかけた。これらが初期の羽毛だとすれば、平たい鱗からどうやってこうした構造ができたのか。

 幸いなことに、糸のような羽毛をもつ獣脚類が、今でも私たちの身近にいる。鳥のヒナだ。ヒナの羽はすべて、毛のような綿羽である。この毛は、ヒナが卵から孵化(ふか)する前、プラコード(原基)と呼ばれる皮膚細胞の小さな集まりからはえてくる。プラコードの上に、活発に分裂する細胞が環状に並んでおり、その部分が円筒状に盛り上がって、綿羽になる。

 爬虫類の場合は、プラコードのうち後ろ端の皮膚細胞だけが増殖して、鱗になる。1990年代末にリチャード・プルムとアラン・ブラッシュが、遺伝子の変異でプラコードの皮膚細胞が水平方向ではなく、垂直方向に増殖するようになって、鱗から羽への変化が起きたとする仮説を発表した。繊維状の構造さえできれば、あとは小さな改造を重ねることで、精緻な羽へ進化するのはさほど難しくないはずだ。

 最近まで、最初に羽毛をもったのは、現生の鳥類に連なる、獣脚類の初期の恐竜だと考えられていた。しかし2009年、中国の研究チームが、毛のはえた鳥盤類(ちょう ばんるい)の恐竜ティアニュロングを発見したと報告した。鳥盤類は、同じ恐竜でも獣脚類とは系統的に大きくかけ離れている。

この発見で、これまでとはまったく異なるシナリオが有力になった。鳥盤類と竜盤類(りゅうばんるい)(獣脚類も含む)が枝分かれする以前、つまりすべての恐竜の祖先の段階で、すでに毛のようなものがあり、その後の進化の過程で、一部の恐竜では羽毛が退化したという筋書きだ。

 一方で、空を飛ぶ爬虫類、翼竜にもふさふさした表皮をもつ種がいたことが発見された。これが羽毛であることが確認されれば、羽の起源はさらに古い時代、翼竜と恐竜の共通の祖先までさかのぼることになる。

 さらに驚くべきシナリオもあり得る。いま生息している動物で、鳥類、恐竜、翼竜に最も近縁のグループはワニ類だ。ワニの体は鱗板で覆われているが、羽の形成にかかわる鳥の遺伝子と同じ遺伝子を、ワニももっていることがわかっている。つまり、鳥類と爬虫類が枝分かれする前、2億5000万年前のワニ類の祖先は羽をもっていた可能性があるということだ。

 もう一つの謎は、羽は何のために生まれたかだ。飛行のためでないとすれば、羽をもつことにどんな利点があったのだろう。これまで言われてきたのは、保温のためという説だ。

 近年になって別の説が浮上している。羽は見せるために進化したというものだ。いま生息している鳥類の羽は実に多様で、色とりどりのデザインが目を奪う。2009年、同じように獣脚類の恐竜の羽も、ディスプレイのために進化したのかもしれないと、その構造に注目が集まった。きっかけは、羽の中にメラノソーム(メラニン小体)と呼ばれる、色素を含む小胞が見つかったこと。メラノソームは形によって色が異なるので、現在の鳥と照らし合わせれば羽毛の色がわかる。しかも化石のメラノソームは非常に保存状態が良いので、色の再現性も高い。たとえばシノサウロプテリクスの尾羽は、赤みがかった色で、白い縞模様があったようだ。

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