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大きな空の贈り物

JANUARY 2011

文・写真=ウィリアム・アルバート・アラード

ウボーイ、ネオン輝く酒場、敬虔なキリスト教徒たち。半世紀にわたって西部を見つめてきた写真家が、過ぎ去った日々を振り返る。

 「村を出たいと思ったことはあるかい?」 と私は尋ねた。

 それは1969年の夏、米国モンタナ州のある村を訪れたときのことだ。そこでは、「ハテライト」という敬虔(けい けん)なキリスト教徒が共同生活を営んでいる。私は17歳の少年と馬に乗って走っていた。もう何週間も雨が降っておらず、大地は乾ききっていた。

 小川のそばで馬を止めた。二人してシャツの前が濡れるのもかまわず、顔を洗って水を飲む。水は冷たくて土の味がした。

 「なあ、ここを離れたいと思ったことはないのかい?」

 「ないね」と少年は答える。「外は大変に決まってる。生活のために、何もかも自分一人でやらなくちゃいけないんだよね?」

 「ああ」と私は言った。「まあ、そういうことだな」

 こんな何気ない会話を交わしてからというもの、私は世界を飛び回り、すばらしい景色と何度も出合った。だが、西部の風景が心から離れることはなかった。戻りたいと何度も思った。

 北部のミネアポリス生まれの私が初めて西部に来たのは、60年代半ば、本誌の取材で訪れたときだ。ワイオミング州の草原に朝日が差し込む瞬間の美しさは、いまだに忘れられない。あんな風景をもっと見たい。来るたびにそうした思いに駆られ、口実や企画をつくっては、現在の自宅がある東部からこの雄大な大地に戻ってきた。今では1年の半分をモンタナ州西部で過ごしている。

 昔は柵やゲートみたいな邪魔なものが少なくて、広々していたよ―もう亡くなったが、モンタナにいた知り合いのカウボーイは、そんなふうに古い時代に思いをめぐらしていたものだ。

 今の時代、誰もが窮屈な暮らしを送っていると感じているのではないか。人生には開かないゲートがいくつもあるように思える。でも運がよければ、自分にとって特別な場所が見つかる。その場所は時とともに姿を変えることもあるだろうが、深く愛せば、死ぬまで自分の心に残る。私にとって西部とは、そんな場所だ。

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