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世界最大の洞窟を
踏破した!

JANUARY 2011


 リンバート夫妻はいくつもの許可を取得した上で、1990年に現地調査を始めた。それからこれまでに、彼らは13回の探検調査を行い、地下川洞窟としては世界最長クラスのケーリ洞窟(全長19キロ)を発見したほか、フォンニャ・ケバン国立公園の設立にも一役買った。同公園には現在、年間25万人の観光客が訪れる。公園の名前の元になったフォンニャ洞窟にやって来る観光客のおかげで、地元の村の収入は飛躍的に増えた。

世界最大の空洞

 「ソンドン洞窟が見つかったのは3度目の探検調査の時でした」と、ハワードは言う。ジャングルに覆い隠された洞窟を見つけられたのは、地元住民が協力してくれたおかげだった。

 ベトナムのこの地域では、竹やぶの下に巨大な石灰岩の塊がある。ソンドン洞窟が形成されたのは500万~200万年前。石灰岩の表面を流れる川の水が岩の裂け目に沿って穴を開け、山脈の下に巨大なトンネルを作り上げた。

 リンバート夫妻のような洞窟探検家にとって、ソンドン洞窟のような巨大洞窟の発見は、それまで知られていなかった地下のエベレスト山を見つけるようなものだ。「氷山の一角を見たにすぎません。やることはまだたくさんあります」と、ハワードは言う。フォンニャ・ケバン国立公園は2003年、貴重な森林と洞窟が評価されて世界遺産に指定された。

 ハワードとデブはこの巨大な空間を初めて目にした時、世界最大の洞窟を発見したという確信を抱いた。実際、その可能性は高い。ソンドン洞窟より長い洞窟や深い洞窟はある。世界最長は米国のマンモスケーブ洞窟群で、総延長は590キロ。グルジアのクルーベラ洞窟は、深さが2191メートルある。だが通路の巨大さという点では、ここに匹敵する洞窟はまずない。

 リンバート夫妻がソンドン洞窟を発見した当時、最大の洞窟はマレーシアのボルネオ島にあるグヌン・ムル国立公園のディアケーブと考えられていた。最近の調査によると、ディアケーブの通路は長さ2キロ、幅150メートル、高さ120メートルだが、調査隊が精密なレーザー機器で測定したソンドン洞窟の長さは4キロ以上。一続きの通路の幅が90メートルで、高さは200メートル近い部分がいくつもあった。

 「私たちは世界最大の洞窟を探していたわけではありません」とデブは言うが、それでも興奮を隠せない。この洞窟の名声が高まれば、地元の村人の生活改善にもつながるからだ。

 私たち調査隊は5日間、ロープをたぐり、地面をはって進んだが、それでも洞窟の半分まで来ただけだった。25人を超える大所帯だと、歩みが遅いようだ。しかも「恐竜に注意」にある岩石が崩れた部分を登るにつれ、危険度は増していた。滑りやすい石の上で足を踏み外せば、30メートル以上も下へ転落しかねない。

 私たちは次の天窓がある「エダムの園」に着いた。最初の穴よりもさらに大きい。物資と時間の余裕が少なくなってきたため、ハワードは先発隊を「ベトナムの長城」に向かわせ、探検を続けられるかどうか確かめることにした。

 長城は両側が切り立った通路を1.5キロほど進んだ先にあり、床面には深さ50センチの水が流れていた。通路の壁は両側とも高さ12メートル、床面はきわめて歩きにくく、何度もつまずきながら前進した。ようやく長城にたどり着いたころには全身泥だらけだった。

“長城”を制す

 空中にせり出した60メートルの長城を登るのは、難易度が高く危険だった。だが先発隊にはガレス・“スウィーニー”・スーエルと“クラーキー”ことハワード・クラークがいた。二人は20年前から、イングランドの最も危険な洞窟で探検調査を続けている猛者だ。

 1日目、クラーキーが壁の下でロープを送り出し、スウィーニーが壁を登り始めた。次々と壁に穴を開けていく。ほとんどの穴は内部が空洞で、ロープに結んだボルトを固定できない。もしボルトが一つでも抜けたら、スウィーニーがぶら下がっているロープは支えを失い、転落するおそれがある。

 2日目、スウィーニーは1日目に登った最高地点まで戻ると、間もなくドリルの機械音が洞窟の暗闇に鳴り響いた。彼はかなり高い場所にいるので、私たちにはヘッドランプのかすかな光しか見えない。そして午後2時(といっても周囲はずっと暗闇なので何時でも関係ないが)、計20時間の作業の末に、スウィーニーはついに壁の向こうに姿を消した。数分後、「やったぞー!」という絶叫が聞こえてきた。

 次にクラーキーがロープを使って登り、下にいる私に「後に続け!」と大声で呼びかけた。

 「ベトナムの長城」の上からは、トンネルの出口の光が見えた。私たち3人は歓声を上げ、全身で喜びを表現した。後に壁の上で計測した結果、床面から天井までは200メートル近くあることがわかった。いずれにせよ、今のメンバーは私たち3人だけ。ここはまさしく人跡未踏の地だ。私たちは長城の裏側に降り、岩の階段を上って洞窟の出口に向かった。

 「おい、こいつを見ろよ!」と、クラーキーが干上がった水たまりの脇にひざまずいて大声を上げた。それはケーブパール(洞窟真珠)だった。洞窟の天井から落ちる水滴が床面の石灰岩に当たり、その勢いで小さな石の粒がはね上げられてできる珍しい洞窟生成物だ。水滴が落ちるたび、この粒が小さなカップ状の石の中でこすれ合い、数千年かけてほぼ完璧な球形になる。たいていはビー玉ほどの大きさしかないが、ここのケーブパールは野球のボールほど。誰も見たことがない大きさだ(この規格外のサイズは、水滴が天井から床面に落ちるまでの距離が大きいためと考えられている)。

 「この通路の名前を決めたぞ。真珠湾だ」と、クラーキーは宣言した。

 私たちはそれから20分かけて岩をよじ登り、洞窟の外に出た。ジャングルは雨だった。私たちは道を切り開きながらジャングルを進み、地平線が見える場所に出たところで確信した。私たちが見つけたのは、別の天窓というだけではない。それはソンドン洞窟の終点だった。謙虚なスウィーニーとクラーキーは声高に主張しないが、私たちはおそらく世界最大と思われる洞窟の通路を初めて踏破したのだ。

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