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特集

アフガニスタン
女たちの反逆

DECEMBER 2010

文=エリザベス・ルービン 写真=リンジー・アダリオ

困や戦争、タリバンの脅威にさらされるなか、虐げられてきたアフガンの女性たちが、公平な人生を求めて立ち上がった。

 25年前に「ナショナル ジオグラフィック」誌の表紙を飾った 「アフガンの少女」は、当時の内戦を象徴し、世界に衝撃を与えた。そして今、ある若い女性の写真がアフガニスタンの過酷な現実を再び象徴することとなった。

 ビビ・アイシャは、夫とその家族のもとから逃げ出した罰として、夫に鼻と耳をそぎ落とされた。アイシャが逃げ出したのは、家庭内暴力や虐待に耐えかねたからだった。

 嫁いできた女性に、夫やその兄弟、父親、さらに姑までが暴行を加えるのはなぜか? 国際社会から長年孤立し、内戦を繰り返してきた社会が、21世紀になって突如、近代化を迫られた結果なのだろうか?

 アフガニスタンにはハザラ人とタジキスタン人、ウズベク人、パシュトゥン人が暮らしている。なかでも人口が最も多く、1880年代以来、政治を牛耳ってきたのがパシュトゥン人だ。

 西部のファラー州から北東部のクナル州にかけて広がる三日月形の地帯では、「パシュトゥンワリー(パシュトゥン人の流儀)」が規範となってきた。多くの意味で、この価値観は今も変わっていない。パシュトゥンワリーの根幹をなすのは「男の名誉」。その尺度となるのは三つの所有物、つまり“金”と“土地”、そして“女”だ。

 人に恥じることのない暮らしは、「メルマスティア(客人の歓待)」、「ナナワティ(逃亡者の庇護)」、「バダル(正義または復讐)」という原則の上に築かれる。パシュトゥン人の男は、人を手厚くもてなすほどに名誉が高まり、よそ者であれ、敵であれ、自分の家に来て保護を求める者をかくまうことを名誉とする。所有物を失った場合は、名誉をかけて復讐を果たす。

 だがパシュトゥン人の女性がそうした行動を取ることは、一般的に認められていない。女性は、売買したり、争って勝ち取る財産とみなされている。だがそうした境遇に耐えてきた女性たちの忍耐も、限界に達することがある。

 私はカブールの避難施設で、ある少女の話を聞いた。そこは、家庭内の虐待から逃れてきた女性を保護する施設だった。少女は、パキスタンとの国境沿いにある、極めて裕福なパシュトゥン人の家庭で育ったが、自分とは身分が違う部族の若者と恋に落ちた。すると父親は、若者とその兄弟4人を殺した。さらに、自分の母親が少女を逃がしたと知ると、母親も殺してしまった。この父親は現在、娘を殺した者に10万ドルの懸賞金を支払うと言っているという。

 この話は極端な例だ。だが多くのパシュトゥン人男性は、自分たちの誇りや独自の価値観が、外国の軍隊や宗教指導者、メディア、人権団体などから非難されていると感じながらも、古くからの伝統に固執している。

残された選択は死か歌か

 ある日、私はカブールの書店で、“ランダイ”と呼ばれる2行の定型詩の詩集を見つけた。パシュトゥン人は村の井戸端や婚礼の席などでランダイを詠み合う。この詩集は、アフガニスタンの著名な詩人で作家だったサイド・バホディン・マジュルフが編纂したもので、元々は『自殺と歌』という書名で出版されていた(彼は1988年、亡命先のパキスタンで暗殺された)。

 マジュルフは初め、生まれ故郷のクナル川流域に伝わる、女たちのランダイを集めた。人間の哀歓に敏感だった彼は、因習に逆らい、男の名誉心をあざ笑う女たちの悲痛な心の叫びに強い力を感じた。パシュトゥン人の女たちは、生まれてから死ぬまで、恥辱と悲哀の運命を負わされる。女は愛される対象にはならないと教え込まれるのだ。

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