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天の川の新事実

DECEMBER 2010


 ヒルズの論文によれば、連星(互いに引力を及ぼして回る二つの恒星)が、いて座A*に近づきすぎると、片方の星がブラックホールに引き寄せられて軌道が小さくなり、多大なエネルギーを失う。すると、もう片方の星はそれと同等のエネルギーを得て、とてつもないスピードで反対の方向へ飛んでいくという。銀河系が生まれてから百万もの星がこうした運命をたどったと、ブラウンは推測している。

132億年前に生まれた

 ブラックホールが激しく活動してはいるものの、銀河系の中心部は肥沃な場所といえる。星が最も密集し、生命をもたらす重元素が最も豊富にあるからだ。太陽系のある、ブラックホールと銀河系外縁の中間あたりでさえ、新たに生まれた星たちが、ガスや塵の円盤をまとって何百万年と生き延びる。これだけの時間があれば、惑星が十分誕生しうる。

 対照的に、銀河系の外縁では惑星が生まれる可能性が低い。日本の国立天文台の研究員である安井千香子は、外縁部にある111個の生まれたての星を調べ、次のように報告した。これらの星には重元素が少なく、たとえば酸素は太陽の20%しかない。生まれてから50万年と天体としては赤ん坊なのに、大半がすでに惑星の形成に必要なガスや塵の円盤(原始惑星系円盤)を失っているというのだ。円盤のないところに惑星は生まれないし、生命も生まれない。

 銀河系の円盤の上下に広がるハローには、酸素や鉄がもっと少ない星がある。重元素が大量に生成されるよりも前に誕生した星たちで、典型的な星の鉄分は、太陽のわずか3%しかない。銀河系の誕生期を垣間見せてくれる星たちだ。

 従来、天文学者が銀河系の年齢を計算する際には、まずハロー内にある球状星団を研究してハローの年齢を推定し、そこから銀河系の年齢を割り出すという方法がとられてきた。球状星団は、明るい輝きを放つ星の集合体だが、かなりの高齢なため、その中にはすでに寿命を終えた星も含まれている。そして具体的な年齢となると、星の誕生と死滅についてどの理論を採用するかによって、結果が変わってくる。

 幸い銀河系の年齢を測定する方法はもう一つある。大学院生のころから「宇宙をさかのぼって見たい」と考えていたハーバード・スミソニアン天体物理学センターのアンナ・フレブルは、銀河ハロー内の個々の星に注目。てんびん座に、太陽のたった1000分の1しか鉄を含んでいない星を発見した。きっと単独の超新星爆発でできたガスから生まれたのだろう。この超新星爆発は通常とちがって、放射性のトリウムやウランといった鉄よりはるかに重い元素を大量に噴射した。これらの放射性元素は一定の比率で減少していくため、今日の残存量と比較することによって年齢を割り出すことができる。

 それによると、この星の年齢はおよそ132億歳と推定される。この数字は球状星団の調査から導かれたものとほぼ一致する。つまり銀河系は、137億年の歴史をもつ宇宙そのものよりも、ほんのわずか若いことになる。数えきれないほどの星を抱え、のちに地球上に生命をもたらすことになる偉大なる銀河系は、宇宙の誕生からほどなく産声を上げたのだ。

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