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特集

天の川の新事実

DECEMBER 2010

文=ケン・クロズウェル

球を含む銀河系(天の川銀河)の全貌が、近年の研究で徐々にわかってきた。その中心にある巨大ブラックホールの姿とは。

 私たちは、天の川に住んでいる。大きな声で、そう言いたい。

 宇宙にはたくさんの銀河があるが、地球や太陽系がある“私たちの”銀河は、「銀河系」とか「天の川銀河」と呼ばれる。他の銀河よりずっと大きく、明るく、密集した銀河だ。

 星が集まっているのは直径12万光年の“薄い”円盤で、これは天の川として肉眼で見える。それをほぼ水素からなる“厚い”円盤が取り巻き、さらにその外を、どんな望遠鏡でもとらえられない暗黒物質(ダークマター)の層(ハローと呼ぶ)が取り囲んでいる。暗黒物質は光を放たないが、銀河系に属する数千億個の星をはるかにしのぐ質量をもつ。すべて合わせると、銀河系の質量は太陽の1~2兆倍にもなる。

 また、銀河系には知的生命体をもつ惑星が、少なくとも一つある。これも自慢してよいだろう。銀河系のような巨大銀河となると、鉄や酸素、ケイ素、マグネシウムといった、ヘリウムより重い元素(天文学ではこれを重元素と呼ぶ)をつくりだし、銀河内にとどめておく力がある。それら重元素は地球型惑星の基本成分であり、私たち生命にとっても不可欠な存在だ。その証拠に私たちは酸素を吸っているし、骨にはカルシウムが、血液には鉄が含まれている。

 小さい銀河だと、こうした生命の原料は星の爆発にともない宇宙空間へ放出され、失われてしまう。しかし銀河系では星間ガスや塵にぶつかり、巨大な重力場にも引き止められる。そして減速した重元素は、ガス雲の成分となり、次の世代の星や惑星をつくる源となる。46億年前、太陽や地球が今はなき星間雲から誕生した時も、そのような経緯をたどった。

銀河系の新事実

 この10年で、銀河系にまつわる数々の新事実が明らかになってきた。たとえば、中心にある巨大ブラックホールについての発見だ。

 銀河系に属するすべての星は、「いて座A*(Sgr A*)」という名のブラックホールを中心に回っている。太陽は、そのブラックホールから2万7000光年離れた位置にあり、周期は2億3000万年だ。ブラックホールから1光年以内の領域には、その引力にがっちりつかまれた星が10万個以上ひしめいている。なかにはわずか十数年で軌道を1周する星もある。そのような星たちの軌道を観察すると、いて座A*の質量は太陽の400万倍あり、10年前に考えられていたよりも大きいことがわかる。

 ブラックホールは、ガスや惑星、時には恒星を丸ごとのみ込む。その時、犠牲になる天体は摩擦と引力によって非常に高温まで熱せられ、断末魔のX線を放出する。X線は周辺のガス雲を明るく照らし、それが犠牲者たちの記録として残る。たとえば2004年には、ブラックホールから350光年ほど離れたガス雲に、X線の反射が見られることが報告された。X線の速度は光速なので、ある物質が約350年前にブラックホールに吸い込まれたことがわかる。

 驚いたことにブラックホールは星を勢いよく放り出すこともある。2005年、銀河の中心部から20万光年離れた位置に、尋常でないスピードで疾駆する星が見つかった。「発見はまったくの偶然でした」と、米国ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのウォレン・ブラウンは語る。うみへび座にあったその星は、銀河の中心から毎秒709キロの速さで遠ざかっていた。この速さなら、いずれ銀河系の支配を逃れて、外の宇宙空間へ飛び出すだろう。

 1988年当時、米国ニューメキシコ州のロスアラモス国立研究所にいたジャック・ヒルズは、そうした現象を予言していた。「むしろ発見にこれほど長い時間がかかったことに驚いていますが、もちろんうれしく思っています」

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