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特集

シリーズ 地球と、
生きる
動物たちの地球大移動

NOVEMBER 2010

文=デビッド・クアメン 写真=ジョエル・サートレイ

り鳥、チョウ、ウミガメ、数々の哺乳動物――。生き物はなぜ長距離を移動するのか。人間の営みが大移動に及ぼす影響とは。

 動物たちの繰り広げる渡りや回遊は、通常の行動に比べ、はるかに大規模で、明瞭なパターンが見られる現象だ。だがその苦労は、はるか後にならないと報われない。移動には、入念な準備と断固たる決意が必要で、それらは動物たちの本能に組み込まれ、世代を超えて受け継がれてきた。

 移動の本質を解明すべく研究を続けてきた生物学者ヒュー・ディングルは、動物ごとに程度や組み合わせは違うが、すべての渡りに共通して認められる、五つの特徴を挙げている。一つ目は、移動をする動物たちは、すみ慣れた生息地を離れ、長い時間をかけて遠く離れた土地まで移動する。二つ目は、移動のルートはたいてい、ジグザグではなく、まっすぐに近い。三つ目は、出発前に大量の餌を摂取するなど、移動の前後に特別な行動をとる。四つ目、移動には特別なエネルギー配分をする必要がある。最後に、移動をする動物たちは、断固たる使命感を抱いて壮大な旅を遂行するため、誘惑に負けて寄り道をしたり、困難にぶつかって旅を諦めたりはしない。

 たとえば、南米大陸南端のティエラ・デル・フエゴから、北米大陸北端のアラスカまで渡りをするキョクアジサシは、旅の途中、米カリフォルニア州モントレー湾の海上で、船上の観光客からおいしそうなニシンを差し出されても見向きもしない。「渡りの途上にある動物は、普段なら飛びつく餌のにおいをかいでも、食欲が刺激されないのです」と、ディングルはいかにも科学者らしい、慎重でそっけない言い回しで説明する。つまり、移動中の動物たちは、できるだけ早く目的地にたどり着こうと必死なのだ。さらに表現を変えて、あまり科学的ではない言い方をするなら、キョクアジサシは“大いなる目的”とでも呼ぶべき、不思議な本能に駆られていて、餌に惑わされることはない。

 餌には後でありつける。休息も、交尾も後でできる。今この瞬間に専念すべきは、旅を終えること。キョクアジサシは北極圏の小石だらけの海辺にたどり着き、仲間と合流してやっと、大いなる目的を果たす。それは、しかるべき場所と時期、環境の下で卵をかえし、ひなを育てるという、進化によって形成された目的だ。

 だが移動のプロセスは複雑で、変化に富んでいるため、その定義は生物学者によってまちまちだ。一つには、学者によってそれぞれ研究対象とする動物の種類が違うからである。プロングホーンをはじめとする大型の陸生哺乳類を研究するジョエル・バージャーは、次のようなシンプルで現実的な定義を好む。「季節の変化とともに、ある生息地から別の生息地に移り、その後、また元の生息地に戻ってくることです」。これは彼自身が研究している哺乳類にぴったり当てはまる。

 一般的に、季節ごとに繰り返される移動の目的は、1年を通じて一つのエリアだけでは手に入らない餌を探すことにある。しかし、毎日、移動を繰り返す動物もいる。動物プランクトンは夜になると餌を求めて海面近くまで浮上し、日中は捕食動物を避けて深海へと潜る。昆虫のアブラムシの動きも同様だ。アブラムシは食草とする植物の若葉を食べつくすと、その子供たちは新たな植物めざして飛び立ち、元の植物には二度と戻ってこない。

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