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よみがえる
先住民の大地

AUGUST 2010

文=チャールズ・ボウデン 写真=ジャック・ダイキンガ

発で消えた湿地や渓流、緑の山々……。かつて居住地を追われた米国の先住民たちが、故郷の自然を再生する取り組みを始めた。

 原子爆弾が開発された研究所で知られるニューメキシコ州のロスアラモス。その町とリオグランデ川のあいだに横たわる峡谷、サンタクララ・キャニオンには、先住民の集落遺跡「プエ・クリフ」がある。

 高さ約60メートルの崖(がけ)の上に石づくりの建物が立ち並び、軟らかい岩でできた崖の中腹には700以上の洞窟(どうくつ)の家が掘られている。おそらく雨が豊富に降った時代に築かれたものだろう。1580年ごろ、深刻な干ばつに襲われると、この集落からは人が消えた。

 それから400年以上がたった今、祖先伝来の土地を原初の姿に戻そうと自然再生に取り組んでいるのが、プエ・クリフの住人の末裔(まつえい)、サンタクララ・プエブロ族だ。10キロ余り離れたリオグランデ川沿いの先住民居留地に暮らす彼らは、ビーバーやマスが川にすみ、在来種の植物が茂る自然を取り戻そうと活動している。

 サンタクララ・プエブロ族をはじめとする米国先住民は、米内務省インディアン管理局が確認しているだけでも564部族ある。彼らが暮らす先住民居留地は全米に2200万ヘクタールあるが、そのほとんどは自然や野生動物の保護区として管理されているわけではない。にもかかわらず、かつて米国政府に土地を奪われた先住民たちが、環境管理の手法をみずから考え出し、人間が荒らした土地を本来の姿に戻そうとする動きを広げているのだ。

 たとえば、モンタナ州のサリッシュ族とクーテナイ族の部族連合は、1979年に米国で初めて居留地を自然保護区とした。それ以降、山岳地と草原からなる面積3万7000ヘクタールのフラットヘッド居留地は、法律で保護されている。

 その後、オレゴン州北東部では、ネズパース族が祖先の土地6590ヘクタールを入手して魚と野生動物の保護を始めた。モンタナ州北東部では、アシニボイン族とスー族がフォート・ペック居留地にアメリカバイソンを呼び戻す事業に取り組み、ミネソタ州ではチペワ族(別名オジブワ族)が、激減していたレッド湖の淡水魚ウォールアイの生息数を回復させた。

 サンタクララ・プエブロの人々が自然保護活動を始めたきっかけは、山火事だった。2000年5月のある夜、下草を除去するための野焼きが燃え広がった。この山火事で、ロスアラモスと近隣の町で建物235棟が焼失し、サンタクララ・キャニオンの上流域を含めて1万9000ヘクタール以上が焼けた。火事が収まると、先住民たちは古くからの観光地だった峡谷を封鎖し、インディアン管理局に代わってこの一帯を管理すると宣言した。

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