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ブラジル 水と風の砂丘

JULY 2010


 乾期、特に10月と11月になると、今度は強い北東の風が海岸線の砂を50キロ近くも内陸まで押し戻し、高さ40メートルにもなる三日月形の砂丘がいたるところに現れる。なかには、年間で20メートルも移動する砂丘もあるという。「季節が移ろうごとに、景色ががらりと変わるんです」と地理学者のコルデイロは話す。

 1月から6月の雨期には、雨水が砂丘の谷間にたまり、毎年新たな池ができる。池は大きいもので幅90メートル以上、深さ3メートルに達する。水位が最も高くなる7月上旬には、いくつもの川が砂丘を切り裂くように流れ、池どうしが結ばれる。魚は川から池に移りすみ、他の魚や昆虫の幼虫を食べる。なかには、泥の中で休眠しながら乾期をやり過ごし、水位が戻ると活動を再開する、カラシン科のホーリーという魚もいる。雨期が終わると、池の水は赤道直下の猛暑で蒸発し始め、場所によっては月に1メートルも水位を下げる。

 ここで暮らしているのは魚や虫ばかりではない。砂丘内にはケイマーダ・ドス・ブリートスとバイシャ・グランデという二つのオアシスがあり、合計で90人が暮らしている。住まいはヤシの葉で屋根を葺(ふ)いた、泥壁の小屋だ。砂丘と同様、彼らの暮らしも季節に応じて変わる。乾期にはニワトリやヤギ、ウシを飼育し、キャッサバや豆類、カシューナッツを栽培する。雨期に入ると、海の近くに移って大型魚のターポンなどを捕り、塩漬けや干物にして商人に売る。

 2002年、マラニャン州の州都サンルイスと、バヘリーニャスの町がハイウエーで結ばれた。田舎町だったバヘリーニャスは、今では「レンソイスの玄関口」を売りに急成長を遂げている。観光需要も急増し、近年は年間6万人以上が国立公園を訪れる。

 その一方で、公園職員を悩ませているのが、オフロードカーなどで砂丘を走り回る行為だ。「砂丘への車両の乗り入れは禁じられています」。そう語るアルビーテは、砂丘で営巣する鳥や、シギやアジサシなどの渡り鳥に悪い影響が及ぶのではないかと懸念している。

 絶えず移り変わる風景の美しさに魅せられるのは、観光客だけではない。オアシスの一つ、ケイマーダ・ドス・ブリートスの長老だったマノエル・ブリートもかつて、500頭のヤギを連れて砂丘を当てもなく歩いては、変化する砂の動きに目を奪われていた。「ここに存在するものすべては、常に変わらないように見える」と、今は亡きブリートは私に語ったことがある。「しかしよく見れば、砂がある場所は日によって違う。風がいつまでも遊んでいられるように、神がこの白い山々を創造したのだろう」

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