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地球と、生きる
21世紀のスマート・
グリッド

JULY 2010


 エジソンは電流が常に一定の向きに流れる「直流」(DC)方式にこだわった。実際、白熱電球には適していたし、当時の直流は低電圧で安全だった。だが、電流の向きが一定ではなく、周期的に方向が変わる「交流」(AC)は高電圧では危険だが過度の送電時の電力損失を抑え、数百キロ先まで電気を届けられる。交流は変圧器で容易に電圧を上げることが可能で、高電圧で送電した後、再び家庭で安全に使用できる110ボルトや220ボルトにまで下げることができる。最終的に交流が直流との主導権争いに勝ったのは、この特長によるところが大きい。

 日本で電気が実用化されたのは早く、1882(明治15)年11月には東京・銀座にアーク灯が設置され、連日大勢が見物に訪れた。1886(明治19)年7月5日には日本初の電力会社東京電燈が営業を開始し、当初138灯だった電灯数は20世紀に入った1901(明治34)年には5万灯にまで増えていった。

 米国では、工場や富裕層の邸宅で使われるようになった電気が中流家庭に届くまでに数十年の時間がかかった。1920年時点でもまだ、米国のエネルギー供給に占める電気の割合は10%に満たなかった。それでも電気は着実に日常生活の中に浸透していった

 当初の電力事業は小さな地区レベルで発電と配電を行うビジネスで、ミニサイズの送電網がつぎはぎ状に全米に張り巡らされた。やがて小さな送電網がつなぎ合わさって、複数州で事業を展開する広域事業者が送電網の多くを統合した。だが現在でも全米を網羅する単一の送電システムは存在せず、互いにほぼ独立した3つの系統(東部、西部、テキサス)に分かれている。

 今でも送電網は古い技術によって支えられている。利用者に近い部分を見るだけでも、それは容易に想像できる。例えば電力会社は、どうやって契約者の電気使用量を調べているのだろうか? 答えは検針係。つまり契約者の自宅やオフィスに検針係を派遣してメーターの数値を読み取っているのだ。では、電力会社は契約者の自宅が停電していることをいつ知るか? 答えは契約者が停電していると電話で苦情を言ってきた時だ。多くの送電線は情報を送ることができず、電力会社が送電網の状態をリアルタイムで把握できていないし、人間が反応の遅い機械式スイッチを使って送電システムを管理する面も多いのが現状だ。

 「米国の送電網は基本的に1960年代の技術です」と『ザ・グリッド(送電網)』の著者フィリップ・F・シューは言う。「通信システムのインターネットは急速に進歩したが、送電ネットワークは昔のままで、契約者の家庭に設置された検針メーターは1920年代の技術です」

 照明のスイッチを入れた際に電球を点灯させる電気は、直前に遠くの発電施設でつくられたものだ。どこでその電気がつくられたか利用者には確かめようがない。多くの州に点在する数百の発電所のすべてが共用送電システムに電気を送り込んでいるからだ。

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