/2010年7月号

トップ > マガジン > 2010年7月号 > 特集:シリーズ 地球と、生きる 21世紀のスマート・グリッド


定期購読

翻訳講座

ナショジオクイズ

気候変動の研究施設があるグリーンランドは、どの国の領土?

  • ノルウェー
  • カナダ
  • デンマーク

答えを見る

ナショジオとつながる



特集

シリーズ
地球と、生きる
21世紀のスマート・
グリッド

JULY 2010

文=ジョエル・アッケンバーク 写真=ジョー・マクナリー

力、風力、太陽光――さまざまな方法で生みだされる電力を、需要の変化に合わせて供給することは可能か? 最新の取り組みを紹介する。

 現代文明は電気のネットワークの申し子だ。今の社会は張り巡らされた送電網につながり、電気が様々な原動力になっている。19世紀までは、太陽光が届く昼間が人間の生活の中心だったが、今では電気を使った照明のおかげで夜も快適に過ごせるようになった。

 米国の農村部まで送電網が初めて到達したのは大恐慌時代の1930年代。「この世で最も偉大なのは心に神の愛が宿ること。その次に偉大なのはわが家に電気が来ていることだ」。教会の日曜礼拝に参加していたテネシー州のある農民が立ち上がってこう言ったと、電力会社は誇らしげに言う。ここで言う電気とはいくつかの白熱電球と、せいぜいラジオくらいで、現代人の暮らしなどは想像もできなかっただろう。

 送電網というのは素晴らしい発明だ。いまや生活のあらゆる所に電気が使われているが、私たちは大気中にある酸素を呼吸する程度の関心しか払わない。電気のありがたみに気付くのは、何かトラブルが起きて真っ暗闇の中に突然放り出され、懐中電灯やろうそくを手探りで探したり、ノートパソコンや携帯電話のバッテリーが切れて充電しようとコンセントを探している時ぐらいだ。

 だが、現在の送電網はシステムが古すぎて21世紀のニーズには合っていない。デジタル機器が急増している米国では、停電などのトラブルで、年間推定800億ドルもの損失が出ている。送電網の信頼性を向上すると同時に設備を刷新し、環境に配慮した多様なエネルギーを利用できるようにする必要もある。大都市から遠く離れた風力発電所や太陽光発電所から電気を運ぶ送電線の増強も必要だ。

 英語で「賢い」という意味の「スマート」な次世代送電網「スマート・グリッド」は、自動化を進めて「自己修復」機能を備え、停電などのトラブルに強く、太陽光や風力など多様で小規模な発電方式との相性が良いというもの。こうした発電方式を活用してエネルギーを「貯(た)める」ことで電力供給の安定化を図る。

 スマート・グリッドでは、利用者はリアルタイムで電気使用量を把握でき、発電コストが最も高くなる需要のピーク時に電気をどれくらい消費したり、どれくらい切り詰められるかが分かる。その結果、電気料金の節約につながり、ひいては環境保護にも役立つようになる。

 白熱電球の発明で既に名声を得ていたトーマス・エジソンが、最初の送電網を世に送り出したのは1881年。エジソンはニューヨーク・マンハッタン島南部にトンネルを掘って銅線を敷設し、ブルックリン橋の付近にパールストリート発電所を建設した。1882年9月4日、モルガン財閥の創始者J・P・モルガンのオフィスでエジソンがスイッチを入れると、数百個の電球がまばゆい光を放った。

1Next

年間購読のお申込はこちら

ナショナル ジオグラフィック バックナンバー