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ニワシドリの求愛

JULY 2010


 研究者たちが熱心にニワシドリの生態を研究するのは、そこに性淘汰(性選択)の力をはっきりと見てとることができるからだ。英国の生物学者チャールズ・ダーウィンは、性淘汰を進化の推進力と定義した。そして生物の雄が、独特の鳴き声や鮮やかな色の体、立派な角といった際立った特徴を備えているのは、この性淘汰の力によるものだと説明した。

 飾りたてたあずまやをつくって、複数の雌と交尾するニワシドリは、この概念を検証するうえで格好の生物なのだ。雄は、雌の巣づくりや子育てを手伝うことはなく、もっぱら遺伝子を提供するだけ。それだけに、雌はきわめて慎重に交尾する相手を選ぶようになる。

 研究者たちがニワシドリを研究するもう一つの理由は、この鳥の生態が驚くほど人間に似ている点にある。芸術家のように花や葉っぱであずまやを飾るものもいれば、ほかの鳥の鳴き声やチェーンソーの音をまねるものもいる。それに、どのニワシドリも求愛のダンスを踊る。

 こうした能力から判断して、ニワシドリには人間以外の生物にはまず見られない、美的センスと文化的行動の萌芽が認められると主張する研究者もいる(現在、チンパンジーやオランウータンなどの霊長類には祖先から受け継いだ文化的行動が認められるとされるが、美的センスは備わっていない)。

 「交尾の相手として合格か不合格かを決めるのは、あくまで雌ですからね」

 ベンツはそう念を押しながら、私を観察小屋に招き入れた。夜が明けたばかりで小雨が降っていた。繁殖期を迎えたカンムリニワシドリは、こんな天気の日によく交尾をする。小屋からは、木の枝でさえずるドナルドの姿が見えた。見栄えのする鳥ではない。羽はくすんだ緑色、頭部にはオレンジ色の筋が1本走っている。

 ドナルドはしばらく、機関銃のようにさえずり続けた。やがて黄色く汚れた葉っぱが1枚、あずまやに落ちると、ドナルドはすぐさま地面に飛び降り、その葉を取り除いた。これなら雌も気に入るに違いないわ、と私は思った。

 ニワシドリの雄は皆、実にこまめにあずまやを手入れし、飾りつける。オーストラリアのアオアズマヤドリは、小枝とガラスの破片を組んで通り道をつくり、手前に青いオウムの羽や、白いカタツムリの殻、黄色や紫色の花を並べる。

 オーストラリア北部の森にすむオオニワシドリは、白や灰色の小石から、ガラスの破片、針金、アルミ箔、さらにはCDまで、光るものならほとんど何でも集めてしまう。もちろん雌が好むからこうした品々を集めるのだが、雄同士でこれらの品々を奪い合ったりもする。

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