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新・人類進化の道

JULY 2010


 日が沈むころ、前年に歯が見つかった場所の数メートル先でハイレ=セラシが手の骨を発見した。翌日以降、その周りの砂質シルト層(砂よりもやや粒が細かい堆積層)を詳しく調べると、手と足の骨、次に脛骨が見つかったほか、つぶれていたが頭骨と骨盤も出土した。

 大きな骨はかなりもろく、掘り出すと粉々になりそうだった。骨を一つ見つけると、何度も硬化剤を注いで周りの岩と一緒に掘り出し、アディスアベバの博物館に輸送する間に壊れないよう、全体を石こうで固めた。

 これはルーシーに匹敵する骨格化石ではないか。しかも、未知の初期人類ではないか。当初は慎重だった調査チームも、そう確信するようになった。アラミスで出土した他の骨はほとんど、死後にハイエナに食い荒らされた痕跡があったが、アルディだけは奇跡的にハイエナの攻撃を免れたようだ。おそらく死後、カバか何かの草食動物に踏まれて泥の中に埋まり、死肉をあさる動物に荒らされずに済んだのだろう。440万年も地中に埋もれていたアルディの骨格は、あのまま地表に露出していたら、1年か2年で粉々に風化して土に戻ってしまっていただろう。

 「幸運と呼ぶにはできすぎた偶然だ」とホワイトは言う。「奇跡としか言いようがない」

 アルディの骨格を発掘し終えるのにその後2年かかり、骨を補強しながら砂や土など付着物を取り除いて標本とするのに、さらに年月を要した。他の脊椎動物の骨6000個を標本にして分類し、歯の同位体を分析するのにも長い時間がかかった。

 東京大学では、諏訪がCT(コンピューター断層撮影)技術を駆使して、もろい骨の計測を始めた。難解な3次元のパズルを組むように、画面上で破片を組み合わせて頭骨を復元し、解析できるようにしたのだ。発見から15年間、アルディの骨を実際に手にしたのは、諏訪とホワイトのほか、ごく少数の研究者しかいない。

アルディはどうやって歩いた?

 車でアドガントレ村に戻る途中、アルディの発掘地点に立ち寄った。道から下ったところにある乾いた平地にテニスコートほどの広さの発掘跡があり、石を積み重ねて覆ってある。今は静まり返っているが、発掘当時ここに響き渡った歓声が聞こえるようだ。1個ずつ骨が見つかるたびに、興奮に満ちた歓声が上がったことだろう。

 アルディの骨は全部で125個見つかったが、骨の詳しい分析を始めてからも、驚くような瞬間が何度もあった。

 たとえば、親指の骨に連結する小さな足の骨、内側楔状骨(ないそくけつじょうこつ)をホワイトが博物館で取り出したときだ。現代人をはじめ人類の他の種では、この骨の関節部は、親指が他の指と平行に並ぶような形状になっている。そのおかげで、つま先でしっかりと地面を蹴って、効率的に二足歩行ができるわけだ。

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