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新・人類進化の道

JULY 2010


440万年前 ラミダス猿人“アルディ”

 強烈な日差しのなか、小石だらけの窪地を歩いていくと、石を並べた目印があった。1992年12月17日、東京大学の古人類学者、諏訪元(げん)(152ページ「人物ファイル」参照)が謎の人類の臼歯を発見した場所だ。2日後、その近くで、化石ハンターのアレマイユ・アスフォーが、第一乳臼歯がついた子供のあごの骨の破片を見つけた。

 ホワイトは当時の様子をこう語る。「あらゆる人類の子供の臼歯化石を見てきたが、あの乳臼歯は、それまでに見てきたものとはまったく違っていた。ゲンと顔を見合わせたよ。何も言う必要はなかった。これはかなり原始的な化石だと、二人ともすぐにわかったんだ」

 調査チームはその一帯をくまなく調べ、化石が見つかった地層が、ガアラ(ラクダ)とダマアトゥ(ヒヒ)と呼ばれる2層の凝灰岩層の間にはさまれていることを突き止めた。年代測定の結果、いずれも440万年前のものとわかった。この2層は、年代測定では区別できないほど短い間隔(もしかしたら1000年くらいの間隔)をおいて形成されたのだろう。

 2層の凝灰岩層にはさまれた化石層は、約9キロにわたって地表に露出している。そこからは、サル、アンテロープ、サイ、クマ、鳥、昆虫、植物の化石のほか、甲虫が卵を産みつけるために丸めた糞(ふん)の化石まで見つかった。この地点は、付近のアファール語の地名にちなんで、アラミスと呼ばれることになった。

 翌年、アラミスの化石層の調査を約1キロ西まで進め、初期人類の化石をさらに発見した。すり減っていない上あごの犬歯、真珠色の臼歯などいくつかの歯、そして腕の骨も出てきた。それだけでなく、当時の人類が生活していた環境を示す決定的な証拠も得られた。

 ほぼ1世紀もの間、学者たちは次のようなシナリオを想定していた。人類の祖先はもともと、チンパンジーのように森で暮らしていたが、森を出て草原で暮らすようになって、効率的に長距離を移動できるよう二足歩行を始めたというものだ。ところが、アラミスで出土した動物の骨の大多数は、森にすむサルとアンテロープの骨だった。見つかった人類の歯のすり減り具合と、エナメル質の同位体の分析からは、果実や木の実など森の恵みを食べていたと推測された。

 彼らが実際に直立二足歩行をしていたのだとすれば(この時点ではまだ、間接的な証拠しかなかった)、森から草原に出たときに二足歩行を始めたという長年の定説がくつがえされることになる。この化石はアルディピテクス・ラミダスと命名された(アルディはアファール語で「地面」、ラミドは「根」の意)。

 1994年、調査チームははやる気持ちで現地に戻った。着いたときには日暮れ近かったが、メンバー全員、急いで発掘地点に向かった。

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