/2010年7月号

トップ > マガジン > 2010年7月号新・人類進化の道


定期購読

ナショジオクイズ

国会議員に占める女性の割合が61%と193カ国の中で最も高い国がルワンダ。では、日本はどれくらいの割合で何位でしょうか?

  • 39.7%で16位
  • 23.5%で78位
  • 10.2%で165位

答えを見る

ナショジオとつながる



特集

新・人類進化の道

JULY 2010


16万年前 初期のホモ・サピエンス

 研究者と学生合わせて20数人、そして武装した6人の護衛とともに、ミドルアワシュに向かった。6週間分の食料と装備を積み込んだ11台の車に分乗し、まずは高原地帯を縫うように進む。

 モロコシとトウモロコシの畑を通り過ぎ、霧に包まれた森林地帯を進んでいくと、やがて断崖(だんがい)の縁にたどり着いた。眼下には、広大な低地が横たわっている。アファール低地だ。

 およそ3000万~2500万年前に現在のアラビア半島に当たる地域がアフリカ大陸から離れ始めると、アファール低地は深く沈み込んで周りを断崖に囲まれ、雨雲を遮られて乾燥化が進んだ。つづら折りの道路を下るにつれて、植生が少なくなり、太陽の日差しが強くなる。断層が無数に走る荒涼とした大地には緑に染まったアワシュ川が流れ、地平線には円錐(えんすい)形の若い火山が見える。その麓(ふもと)で銀色に輝くヤルディ湖をめざして車を走らせた。

 2日後、ヤルディ湖に到着し、湖岸に沿って歩き始めた。ホワイト、アスフォー、ウォルディゲブリエルのほか、調査に長くかかわってきた二人、地質学者のビル・ハートと、アファール族の氏族集団ブーリ=モダイトゥの首長アハメド・エレマも同行している。

 歩いていると、鮮やかな色のトンボが足下にまとわりつくように飛んでくる。ここは化石の形成にはうってつけの場所だ。湖には野生動物が水や食料を求めて集まり、互いに襲ったり襲われたりする。死んだ動物の骨は堆積(たいせき)物に埋もれて風化を免れ、有機物はゆっくりと鉱物に置き換わって化石になる。

 その日は、ブーリ半島と呼ばれる丘陵を横切って東に進み、アファール族の村、ヘルトに向かった。湖畔を離れて、低い灰色の砂丘を横切っていくと、ほどなくアファール族の少年と少女がヤギの群れを率いて近づいてきた。

 アファール族は牧畜民で、銃を使うようになったことを除けば、今も500年前とほとんど変わらない生活をしている。のどかなヤギの鳴き声を聞きながら、酷暑の乾燥地帯を歩いていると、確かに一歩ずつ、過去へと時間をさかのぼっているような気がした。

 遠くのほうに、草を葺(ふ)いた小屋と、灌木(かんぼく)でつくった囲いが見えてきた。「足下に注意してください」とアスフォーに言われて地面を見ると、辺り一面、小石まじりの砂の中に、カバの頭骨の破片が散らばっていることに気づいた。その近くには、長さ10センチ余りの涙形の石器がある。アファール族は石器をつくらないから、過去の人間のものだ。過去をのぞく最初の“窓”に到着した。

 1997年11月、ヘルト村から200メートルほど離れたこの地点で、調査チームの一人が人類の頭骨の破片を見つけた。その下の砂には、完全な形をとどめた頭骨が埋まっていた。

Back2next

年間購読のお申込はこちら

ナショナル ジオグラフィック バックナンバー