/2010年6月号

トップ > マガジン > 2010年6月号 > 特集:敦煌 莫高窟


定期購読

翻訳講座

ナショジオクイズ

気候変動の研究施設があるグリーンランドは、どの国の領土?

  • ノルウェー
  • カナダ
  • デンマーク

答えを見る

ナショジオとつながる



特集

敦煌 莫高窟

JUNE 2010

文=ブルック・ラーマー 写真=トニー・ロー

国北西部に位置する敦煌莫高窟。世界遺産でもあるこの仏教遺跡は、古代の人々の祈りに満ちている。

 砂漠には人間の骨が積み上げられていた。

 629年、唐の仏教僧である玄奘三蔵(シュエンザンサンザン)は、交易や侵略、思想伝播の道として世界で最も重要だったシルクロードを通って旅をした。その道中、玄奘が目にした累々たる白骨は、行く手に待ち受ける危険を暗示していた。

 唐の広大な版図のさらに西に広がる砂漠で、玄奘は激しい砂嵐に遭う。そして、進むべき方角が分からなくなり、倒れる寸前になった。立ち昇る熱気が幻覚を見せ、遠くの砂丘に出現した軍団が玄奘を威嚇し、苦しめた。だがもっと恐ろしいのは、刀を持った盗賊で、シルクロードを行き交う隊商やその荷を狙い、襲撃した。

 隊商たちはシルクロードを通って、西方にあるペルシャや地中海地域の王宮に絹や茶、陶器を運び、東方にある唐の都、長安(現在の西安)に黄金や宝石、馬を運んだ。長安は当時、世界屈指の大都市だった。

 玄奘の旅の様子が記された『大唐西域記』によれば、彼を旅に駆り立てたのはシルクロードを運ばれたもう一つの重要なもの―仏教だった。このルート沿いではマニ教やキリスト教、ゾロアスター教、そして後代のイスラム教など、さまざまな宗教が勃興したが、仏教ほど中国に強い影響を与えたものはなかった。

 仏教がインドから中国に初めて伝わったのは1~3世紀頃と考えられている。玄奘がインドから持ち帰り、その後20年ほどかけて研究・翻訳した仏典は、中国仏教の礎となり、勢力拡大を後押しした。

 玄奘は16年に及ぶ旅の終盤に、敦煌に立ち寄っている。当時、敦煌はシルクロード沿いのオアシス都市として繁栄し、さまざまな人と文化が混在していた。そしてここで、仏教世界を代表する驚異の至宝が生まれることとなる。それが莫高窟だ。

1Next

年間購読のお申込はこちら

ナショナル ジオグラフィック バックナンバー