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特集

秘境フォジャ山脈

JUNE 2010


過酷なキャンプ生活

 湿地キャンプでの生活は、つらい体験も伴った。ヒルが脚に吸いつき、かみ跡から血が流れ出た。イラクサのとげに触れて、体のあちこちがひりひりと痛んだ。ある晩、ヘルゲンのテントで、大量のウジ虫が頭上から降ってきたこともある。蚊帳のように網の目になったテントの天井に、ハエがおびただしい数の卵を産みつけ、孵化(ふか)したウジ虫が落ちてきたのだ。

 夜明けは鳥の歌声とともにやってきた。とりわけヒメパプアヤマツグミのよく通る鳴き声は、いたるところで聞こえた。赤と緑の羽毛に覆われたアカオキスジインコの群れが、甲高くさえずりながら頭上を弾丸のように飛び交い、緑と黄の羽をもつヒメアオバトの仲間が木々に隠れたまま低く鳴く。テントに水滴が落ちる音が、一日中聞こえていた。夕方になると、辺りは耳をつんざくようなセミの鳴き声で満たされ、日が暮れるとカエルが鳴き始めた。

 毎日必ず、意外な発見があった。めったに見られないキノボリカンガルーを見つけたこともあるし、マストリヒトが毎晩捕まえてくるガは、色や形もさまざまだった。

 だが、なかには容易に姿を見せない生物もいる。調査も終わりに近づいたある日、鳥類担当のショールズが森での調査を終えて戻ってくると、しょんぼりと座り込んだ。彼はフォジャ山脈にいるカンザシフウチョウ(フウチョウ科の鳥)の行動を記録し、ニューギニア島のほかの場所に生息するカンザシフウチョウとは別種であることを証明しようとしていた。

 「窮屈で汚い小屋に隠れて、蚊に刺されながら7時間も粘ったのに、カンザシフウチョウを観察できたのはたったの1分だけだった」と、ショールズは悔しがった。

 3週間の調査が終わった時点で、調査中に見つかった生物のリストは、チョウやガ、トンボ、カエル、ヤモリなど、実にさまざまな生物の名前で埋め尽くされた。新種と思しき生物もたくさん見つかった。探査したのはフォジャ山脈のごく一部だったが、ニューギニア島の生物相に関する知識は大きく広がった。

 調査隊を乗せたヘリコプターが湿地から離陸すると、プロペラ音に驚いた白いオウムの群れが、森の上へ飛び出してきた。水平線のかなたまで森が続く。やがてヘリコプターの騒音が遠ざかり、オウムたちは木々へと帰っていった。フォジャ山脈はほとんどかき乱されることなく、太古から続く生命のリズムを取り戻した。

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