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秘境フォジャ山脈

JUNE 2010


 湿地キャンプには10個ほどのテントが設営された。黄色の大型テントが、仮設の研究室となった。この研究室で、米スミソニアン協会のクリストファー・ヘルゲンとクリストファー・ミレンスキーが、それぞれ哺乳類と鳥類の標本を作製し、オーストラリア人のポール・オリバーがカエルとトカゲの標本を作製した。

 米ニューヨーク州にあるコーネル大学鳥類学研究所の鳥類学者エド・ショールズは、カメラと録音機材を森の奥まで運び込み、野鳥の観察記録を取った。今回の調査に共同で出資した研究機関、インドネシア科学院の植物学者、アセップ・サディリは、キャンプ地付近の調査現場で植物の標本を採集した。

 調査隊のメンバーは、さまざまな種類の罠(わな)や虫捕り網で生物を捕まえた。夜間、ヘッドランプで照らしだしたカエルを素手でつかむこともあった。大型の鳥類や哺乳類は、フォジャ山脈の麓(ふもと)に住む村人が捕まえてきた。調査隊のガイドを務めた村人たちは、キャンプで発生する雑用も引き受け、森について驚くほど深い知識を何度も提供してくれた。

 調査2日目のことだった。狩りに出ていた地元のハンターたちが、翼幅1メートルほどの、小型のコヒクイドリを手に戻ってきた。ミレンスキーは標本にしたがったが、ハンターたちには別の思惑があった。やがて辺りには、肉を焼くにおいがたちこめた。

 なんとかコヒクイドリの骨を確保したミレンスキーは、大腿骨の汚れを取り除きながらこう言った。「野生のコヒクイドリの標本なんて、この100年間で初めてかもしれません」

 地元のハンターたちは、哺乳類担当のヘルゲンにも獲物を提供した。小型のワラビーと、珍妙な姿をしたミユビハリモグラだ。世界最大の卵生哺乳類であるミユビハリモグラはカモノハシの仲間で、その細長くとがった鼻の先で微弱な電気を感知して地中のミミズを見つける。そしてギザギザの突起がついた舌を使って、スパゲティを食べる要領で、歯のない口の中にミミズをすすり込むのだ。

 「世界で最も奇妙な哺乳類です」

 ヘルゲンはそう言って、このハリモグラの風変わりな特徴を挙げた。筋肉質の体、体毛が進化した鋭いとげ、雌の乳腺(乳首はない)、先端が四つに割れた雄のペニス。そして最後にこうつけ加えた。「私のお気に入りの哺乳類です」。だがこれまで、ミユビハリモグラの赤ちゃんを目にした者は一人もいない。

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