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秘境フォジャ山脈

JUNE 2010

文=メル・ホワイト 写真=ティム・レイマン

ューギニア島西部の秘境フォジャ山脈。人の住んだ形跡がなく、原生の自然が息づくこの山地の熱帯雨林を生物学者たちが3週間にわたって調査した。そこで出合ったのは、両生類から野鳥、昆虫まで、まだ名もない不思議な姿の生き物たちだった。

 持参した衣類を全部無くしてしまったというのに、ヘンク・ファン・マストリヒトはまったく平然としていた。

 ここはニューギニア島西部のフォジャ山脈。マストリヒトはほんの数時間前、ヘリコプターでこの世界有数の秘境に降り立った。標高はおよそ1700メートル。周りには熱帯雨林が広がる。プロペラの音がほとんど聞こえなくなった頃、彼はようやく気づいた。衣類のバッグが見当たらないこと、そしてこの先3週間、着のみ着のままで過ごさなければならないことに。

 それでもマストリヒトは幸せだった。赤い虫捕り網を手に、ぬかるんだ湿地を慎重に歩き進み、時折、ふいに動きだして、宝石のように美しく輝くチョウを捕まえる。

 「こっちへおいで。恐くないよ」

 オランダ語なまりの英語で、チョウたちに呼びかける。かと思うと今度は、立ち止まって地面に放尿した。チョウがミネラル成分を含む尿を目当てにやってくることを知っているのだ。マストリヒトは中くらいの大きさのチョウを捕まえると、先の丸いピンセットで羽を押し広げた。漆黒の羽に、「J」の文字の形をした模様が白く輝いている。

 「これはすごい。間違いなく新種ですよ」と言い、彼は顔面いっぱいに笑みを浮かべた。

 マストリヒトはキリスト教フランシスコ会の修道士で、生物学の教育を正規に受けたわけではない。だが数十年にわたってニューギニア島西部のチョウを研究していて、この地域のチョウについて誰よりも詳しい。

 「見てください。新種のミツスイです」

 羽が黒っぽく、目の周りと頬がオレンジ色をした鳥が果物をついばんでいる。キホオミツスイ属に分類されるこの鳥は、フォジャ山脈にしか生息していない。実物を見たことのある研究者はおそらく10人程度だろう。

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