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特集

眠りの神秘

MAY 2010


なぜ、眠るのか?

 睡眠は脳の働きに必要だという説が有力だ。確かに、一晩ぐっすり眠れば、頭が冴(さ)える。だが問題は、この仮説を実証できるかだ。睡眠はどのように脳に役立つのだろう。ロバート・スティックゴールド率いるハーバード大学の研究チームが、大学生を被験者に、昼寝を挟んで様々な知能テストを行った。この実験で、レム睡眠の後は文法などパターン認識の能力が高まり、深い睡眠をとった後は記憶力が高まることが分かった。脳は睡眠中に、その日に学習した事柄を長期間にわたって保持される記憶(長期記憶)として蓄える作業を行っているという研究報告もある。

 こうした研究から、記憶の定着が睡眠の役割の一つと考えられる。睡眠研究の権威ジュリオ・トノーニは数年前、この説に興味深い“ひねり”を加えた。トノーニの論文によると、眠っている間に、脳は重複したシナプス(神経細胞間で信号が伝達される接続部)や不要なシナプスを取り除いているという。つまり、睡眠は不要な事柄を忘れて、重要な事柄を記憶することに役立っているというわけだ。

 睡眠は脳だけでなく、体全体の機能ともかかわりがありそうだ。致死性家族性不眠症の患者が長く生きられないことがそれを示唆している。この病気の患者の直接的な死因については、よく分かっていない。文字通り、眠ることができないために死ぬのか。そうでないのなら、不眠は患者の体をどの程度まで衰弱させるのだろう。ラットを使った実験で、睡眠を奪うと傷が治りにくくなったという報告がある。睡眠を取ることで免疫力が高まるという報告もある。だが、これらは断定的なものではない。

 レヒトシャッヘンは1980年代にラットの眠りを奪う実験をした。細い軸に支えられた円盤の上にラットを置き、その下に水槽を設置する。ラットが眠ると、円盤が回転してラットは水中に振り落とされ、すぐに目が覚める仕掛けだ。この実験では、すべてのラットが2週間ほどで死んだ。しかし、死体を解剖しても、異常は見つからなかった。内臓にはこれといった損傷はなく、睡眠を奪われたことによる極度の疲労で死んだと考えられた。2002年にもっと高度な装置で、同様の実験が行われたが、やはり、はっきりした死因を突き止めることはできなかった。

 レム睡眠の発見者の一人、スタンフォード大学のウィリアム・ディメントに「私たちはなぜ眠るのでしょうか?」と尋ねてみた。「さあ、なぜでしょうねえ。私が知るかぎりでは、はっきりしているのはただ一つ、眠くなるから眠るということだけですよ」―50年間にわたり睡眠を研究してきたディメントでも、そう答えるしかないのだ。

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