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特集

シリーズ
地球と、生きる
セントヘレンズ山

MAY 2010

文=マッケンジー・ファンク 写真=ダイアン・クック、レン・ジェンシェル

30年前に大噴火した米国のセントヘレンズ火山。火砕流や泥流で破壊された自然は、噴火前とは違った姿に生まれ変わりつつある。

 湖底に散乱した何本ものビールの空き缶、水没した切り株、横たわるボート、体長25センチのニジマス……。セントヘレンズ山の麓(ふもと)にあるスピリット湖で、10代のころからスキューバダイビングをしてきたマーク・スミスは、大噴火以前の湖の様子をこんなふうに覚えている。とりわけ印象に残っているのは、湖底で亡霊のように立ち並ぶ、枯れたモミの木々だ。

 現在セントヘレンズ山の近くで宿泊施設を経営しているスミスは、水没したモミの木々を“化石の森”と呼ぶ。この水中の森は過去の噴火の痕跡であり、これまでもスピリット湖が噴火の猛威にさらされてきたことの証しである。

 1980年5月18日、大噴火が起きると、セントヘレンズ山の山頂から400メートル下までが一気に崩壊し、山小屋や道路といった人間の痕跡だけでなく、あらゆる生物の痕跡をもかき消してしまった。体積にして約30億立方メートル分の土砂と火山灰、雪解け水が流れ込んで、スピリット湖は広さが2倍になり、深さが半分になった。湖面は周囲の森から流れてきたおびただしい数の倒木に覆われ、湖水は細菌が大量に繁殖して悪臭を放ち、酸欠状態になった。

 それから30年後、スピリット湖で不思議な現象が起きている。体長が50センチと噴火前の倍にまで成長したニジマスが、湖で見られるようになったのだ。

 ニジマスはどうやって復活を遂げたのか。洪水のときにほかの湖から流れ込んだなど、さまざまな説があるが、ワシントン州魚類野生生物局の生物学者ボブ・ルーカスは、誰かが不法にニジマスを放流したと考えている。1990年代後半、「自分が放流した」と告げる匿名の電話がルーカスの自宅にあったのだ。米国森林局の生態学者チャーリー・クリサフリによる簡易的な遺伝子検査からも、現在のニジマスは、噴火前にいたニジマスの子孫ではないと考えられる。

 だが、クリサフリにとって重要なのは、ニジマスがどこからやって来たかではなく、なぜ大型化したかだ。

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