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特集

聖なる水

APRIL 2010

文=キャシー・ニューマン 写真=ジョン・スタンマイヤー

リスト教会の洗礼盤を満たす水から、遺灰がまかれる聖なる川の水まで、水は私たちの生命を清めてくれる。

聖なる水
洗礼盤の聖水のしずくから、聖なる川への散骨まで、水は我々の生活を清める役割を果たしている。

動画翻訳

ジョン・スタンマイヤー 写真家

ナショナル ジオグラフィック誌に頼まれたのは
特に人間の“精神の渇き”との関わりで水を見るということでした

膨大な数の場所を訪れました計13カ国は回ったと思います

その場所に行き ただ待つのです
すると 何かが起こる瞬間にたまたま居合わせることがあります

これは日本で撮った神道で行われる清めの儀式です
この撮影の時もそうでした
全く予期していなかった光景が展開されたのです
突然人々が集まり出し
この壮大な岩場のあちこちにろうそくを立て始めました
すると想像もしなかった見事な光景が生み出されたのです

流れる水を撮る際はその水の動きを表現したいわけですが
何をすべきか意識的に考えて撮っているのではありません
どうなるか見当もつかない状態で撮影しているのです
すべては偶然のたまものです

私は何もしていないのです
人々のすばらしさロケーションの壮麗さと威光
すべての輝き並び立つものたちがひとつに結実して――
ナショナル ジオグラフィック誌というすばらしい雑誌の形になったのです
おのずと形を成したのであり私の力によるものではありません

「聖なる水」の特集が人々の意識の扉を叩くことを願っています
1人の意識の扉に届けばそれは成果だと思います
すべての人の意識に届く日がいずれ来るのか 分かりませんが
少なくとも1人の意識に届けば役割を果たした思いです

 英国の詩人フィリップ・ラーキンは、「宗教を興すように求められれば、私は水を利用するだろう」と記した。そして、事実、水は多くの宗教で重要な役割を果たしている。1950年代、ルーマニア生まれの宗教学者ミルチャ・エリアーデは、水について、こんな解釈を示した。「水とは源であり、始まり。水はいかなる形態に先行し、いかなる創造物を支える」。

 人類の歴史が始まって以来、水は常にそうした存在であったし、伝説の中では、人類の誕生以前からそうだった。旧約聖書「創世記」によれば、「水の中に大空」を造った神により地は生み出された。バビロニア人は、淡水と塩水の混沌(こんとん)から世界は造られたと信じた。巨大な洪水の伝説は、遠い昔に祖先が体験した大惨事の記憶として、ヘブライやギリシャ、アステカなどの古代文化の不可欠な要素ともなっている。

 肉体は渇くが、精神も同様に渇き、水を欲する。「私は湖の近くで暮らさずにはいられない」と、スイスの精神科医カール・ユングは記した。精神の深みへと分け入り、水と無意識を同一視した人物だ。「水なしでは、誰も生きられないだろう」

 羊水とともに生まれ出てから、死して体を清められるまで、水は人生の上を流れ続ける。そして、神への祈りは水とともに流れていく。聖書に描かれたヨルダン川のように深くゆったりと、病を治癒するというフランス南西部のルルドの泉のように神秘に満ちて、そして、涙のように精神を清めながら……。

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