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特集

食虫植物 魔性のわな

MARCH 2010


植物が虫を食べる理由

 私はサラセニアをこの目で見ようと、米国マサチューセッツ州にあるハーバード大学の演習林を訪れた。案内してくれたのは、演習林の生態学者アーロン・エリソンだ。湿地のぬかるみにはまって脚を引き抜こうと悪戦苦闘する私を、何度も辛抱強く待ってくれた。「股まではまってみないと、本当に湿地を歩いたとは言えないですからね」とエリソンは話す。

 湿地には、実験用の個体の生育場所を示す、小さな旗がいくつも立っている。ここでは、特殊な餌で育ったハエをサラセニアに与え、この植物が炭素や窒素をどの程度ハエから吸収したかを分析している。サラセニアは育ちが遅く、数十年も生きることがあるので、実験は何年も続く場合もある。

 そもそもなぜ食虫植物は、虫の“肉”を食べるように進化する必要があったのか。人間のような肉食動物の場合は、肉のタンパク質と脂肪から筋肉をつくり、エネルギーをためる。だが、植物には筋肉があるわけではない。

 実は、食虫植物が虫から吸収しているのは、窒素やリンだ。こうした栄養分を吸収して、光合成に必要な酵素をつくっている。虫を食べることで、ほかの植物のように太陽のエネルギーを利用できるようになる。

 食虫植物は、光合成の効率がかなり悪い。消化酵素や粘液の付いた毛といった捕虫の“道具”をつくるのに、大量のエネルギーを消費するからだ。サラセニアやハエトリグサは平たい葉をもたず、太陽光を集めにくい。

 エリソンとゴテリの考えでは、虫を食べることのメリットが、そのデメリットに勝ることがあるのは、特殊な環境だけだという。たとえば、湿地の土には窒素やリンが少ないため、土から養分を吸収するよりは、虫から吸いとるほうが栄養を得やすい。それに、湿地は日当たりがよいため、たとえ光合成の効率が悪くても、生き延びることはできる。

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