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特集

食虫植物 魔性のわな

MARCH 2010


 ボルコフの実験では、たまった電気が葉の内部を流れると、細胞膜に小さな穴ができることがわかった。葉の表面(感覚毛のある面)の細胞にある水分がその穴から裏面に移動して裏面の細胞を伸ばすため、葉の形が凸面から凹面にすばやく変わる。こうして2枚の葉がはじけるように両側から閉じて、虫を封じこめる。

 水生の食虫植物、タヌキモの場合は、捕虫嚢(ほちゅうのう)と呼ばれる小さな袋をスポイトのように使って、水中を泳ぐ虫を吸いこむ。まず袋の中から水を出して弁を閉じ、内部を減圧状態にしておく。ミジンコなどの小さな生き物が近くを泳いでいて、捕虫嚢の弁に付いているとげに触れると、弁が開き、水圧の低い袋の中に虫が水といっしょに吸いこまれる。弁はすぐに閉じる。

 ほかの捕虫方式として多いのは、ハエ捕り紙のように、粘液の付いた毛に虫をくっつけて捕まえるやり方だ。だが、上記のどれにも当てはまらない方法を使うのが、北米のサラセニアや熱帯のウツボカズラ(ネペンテス)だ。これらの植物は、長い袋状の葉、捕虫袋(ほちゅうぶくろ)に虫を落として捕まえる。大型の種になると、この“落とし穴”の深さは30センチを超え、カエルやネズミまでわなに落ちてしまうことがある。

 なぜ虫や小動物は、袋に落ちてしまうのか。その秘密は、葉の表面に分泌される蜜にある。東南アジアのボルネオ島に分布するウツボカズラの一種、ネペンテス・ラフレシアナの蜜には、虫をおびき寄せると同時に、葉の表面をすべりやすくする役割がある。蜜の香りに引き寄せられた虫が捕虫袋の入り口(えり)に止まると、脚をすべらせて、袋の底にたまった粘っこい消化液に落ちる。こうなると、飛んで逃げようとしても、液体が脚にからみついて抜けだせない。

 消化液は、昆虫の硬い外骨格を通り抜け、強力な酵素で内臓と肉を分解する。食虫植物の多くは特殊な消化腺からこの酵素を分泌して、溶けだした栄養分を吸収する。

 一方で、獲物の消化をほかの生物にまかせる食虫植物もある。その一例が、北米の湿地ややせた砂地に育つサラセニア・プルプレアだ。その捕虫袋の中には、ボウフラやユスリカ、微生物などが適応して生きている。これらの生物が、袋の中に落ちた獲物をまず食べて分解し、そのときに出た栄養分をサラセニアが吸収する。「ほかの生き物に消化させることで、反応を速めているんです」と、米国バーモント大学のニコラス・ゴテリは話す。

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