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食虫植物 魔性のわな

MARCH 2010


 一方、『種の起源』を著し、「進化論の父」と呼ばれるチャールズ・ダーウィンは、“肉食”の植物に強い興味を抱いて、詳しく研究した。1860年、英国の荒れ地で初めてモウセンゴケを目にしたあと、知人への手紙にこう書いている。「世界中のあらゆる種の起源よりも、モウセンゴケのほうに興味を引かれている」

 ダーウィンは何カ月もかけて、モウセンゴケを使って実験をした。ハエを葉に落とし、粘液の付いた毛が獲物をゆっくり包んでいくのを観察した。生肉や髪の毛ほどの重さで刺激を与えるだけでも葉が反応する一方、水滴の場合は、いくら高い場所から落としてもまったく反応しないことも突き止めた。雨粒にいちいち反応するのは、モウセンゴケにとって「大きな害」になる、とダーウィンは考えた。この反応は偶然ではない。適応なのだ、と。

 その後、食虫植物の研究をほかの種にまで広げ、1875年、成果を著書『食虫植物』にまとめた。ハエトリグサの葉が閉じたときの様子を、「一時的なコップか胃袋」をつくり、獲物を溶かす酵素を分泌すると描写している。葉が閉じてから再び開くまでに10日ほどかかることを観察し、葉の縁のとげで檻(おり)のようにすき間を残しているのは、小さな虫を逃がすためではないかと考えた。そうすれば、小さな獲物を消化するという非効率的な活動に貴重なエネルギーを使わなくてすむ。

 ダーウィンは、虫を感知してから0.1秒程度ですばやく葉を閉じるハエトリグサの動きを、動物の筋肉の収縮のようなものだと考えた。だが、植物には筋肉も神経もない。いったいどうやって、この動きを実現しているのだろうか?

 食虫植物の捕虫や消化の仕組み、進化の謎を解き明かすために、21世紀の生物学者は、最先端の装置を駆使して細胞やDNAを調べる。そんな研究者の一人で、米国アラバマ州のオークウッド大学の植物生理学者アレクサンダー・ボルコフは、長年の研究の末にハエトリグサの謎を解き明かしたと考えている。「この植物は、電気信号を使うんです」

 ハエトリグサの葉に生えた毛(感覚毛)の1本が虫に当たって曲がると、弱い電気が発生する。電気は葉の細胞に蓄積され、短時間に2回分の電気がたまると、葉がパタリと閉じる。1回目で閉じないのは、雨粒など獲物以外のものが触れたときに“誤動作”しないためだ。

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