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食虫植物 魔性のわな

MARCH 2010

文=カール・ジンマー 写真=ヘレン・シュミッツ

せた土壌に育ち、虫から栄養を吸いとって生きる食虫植物。あの手この手で獲物をおびき寄せる、華麗なる狩りの秘密に迫る。

 腹をすかせたハエが1匹、マツの木々のあいだを一直線に飛んでいく。向かう先は、赤い葉っぱが花のように地面に生えた一画。どうやら、そこから放たれている、花の蜜に似た香りに引き寄せられているようだ。ハエは赤い葉の上に止まり、その表面からしみ出ている甘い蜜を吸おうと体を動かした。脚が葉の内側に生えた短い毛の1本に当たり、続いてもう1本にも触れた。

 その瞬間、葉が両側から壁のように迫ってきた。逃げようとしたが、もがけばもがくほど、葉はきつく閉まっていく。縁に生えた何本ものとげが、頭上で重なり合った。葉から分泌されるのは、もはや甘い蜜ではなく、強力な消化液だけ。この死の液体を全身に浴びたハエは、なすすべもなく内臓と肉をどろどろに溶かされ、息絶えていった……。

 空を自由に飛び回るハエが、大地に根を下ろす食虫植物、ハエトリグサにまんまと捕まり、屈辱的な最期を遂げた瞬間だ。

虫も学者も引きつける魅力

 人は虫を捕まえる植物を見たとき、その妙技に魅了される者もいれば、何か嫌な気持ちを抱く者もいるようだ。

 18世紀スウェーデンの博物学者で、「分類学の父」と呼ばれるカール・フォン・リンネは、植物が虫を食べるという考え方を一切受け入れなかった。ハエトリグサに関しては、「神が決めた自然の秩序に反する」とし、捕虫は単なる偶然であり、虫がもがくのをやめれば、葉を開いて虫を逃がしてやるはずだと結論づけた。

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