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地球と、生きる
オオカミとの戦い

MARCH 2010


オオカミの再導入

 1995年と96年、米魚類野生生物局はカナダのオオカミを捕獲して、米イエローストーン国立公園とアイダホ州の自然保護区に放した。過去に例のない試みに不安や憤りを感じる人々がいる一方、オオカミ復活への希望を抱く人々もいた。連邦政府によるオオカミ再導入が賛否を巻き起こすなか、再導入をきっかけに米国西部のオオカミの生息数が増加。人間との戦いが激しくなっていった。

 2008年、米国西部全体でオオカミに殺されたウシやヒツジなどの家畜は569頭に上った。これは同地域での家畜の死亡数の1%に満たないが、牧場によっては大きな痛手を負った。

 同年、モンタナ州とアイダホ州、ワイオミング州で、家畜の被害を減らすため、264頭のオオカミが殺された。かなりの数だが、当時、オオカミの生息数は約1600頭にまで増え、群れも200を超えていた。現在、ワシントン州北東部にも新たに二つの群れがおり、コロラド州にも群れがいると言われる。

 この事態を喜んでいるのは自然愛好家と観光客だろう。イエローストーン国立公園には毎年数万人の観光客がオオカミを見にやって来ていて、その経済効果は推定35億円とも言われる。また、食物連鎖の頂点に立つ捕食動物がよみがえったことで、バランスが崩れていた自然環境が修復され、生物の多様性も復活するのではないかと研究者は考えている。

 一方で、家族を森に行かせるのが心配になったと言う住民もいる。狩猟愛好者の怒りも大きい。彼らにとってオオカミは、獲物を横取りする憎き存在なのだ。

 2009年5月、米連邦野生生物保護局は、ロッキー山脈北部のオオカミの生息数が回復したと発表。オオカミは保護の対象から外され、その後の対応はモンタナ州とアイダホ州に任されることとなった。その直後、両州はオオカミの狩猟を許可し、年間の捕獲頭数を定めた(モンタナ州は75頭、アイダホ州は220頭)。

 「群れが一つしかなく絶滅寸前だったオオカミが、地域全体で狩猟の対象になるまでに回復したのには驚きました」と語るのは、モンタナ州魚類野生生物公園局のジム・ウィリアムズ。州北西部の野生生物保護プログラムの責任者だ。「これは、絶滅の危機に瀕(ひん)する種の保存に関する法律が奏功した例です」

 2008年、オオカミが絶滅危惧種リストから外されると、ワイオミング州はオオカミを害獣に指定し、年間の捕獲数を無制限とした。だがそれに反対する訴訟が起こり、現在オオカミは暫定的にリストに戻されている。

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