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一夫多妻を守る教団 FLDS

FEBRUARY 2010


知られざる教団

 FLDSは米国内でもあまり知られていない教団だった。一気に注目が集まったのは2008年4月。テキサス州エルドラドにある信徒の共同体、ヤーニング・フォー・ザイオン(YFZ)農場に警察が踏み込み、その様子がテレビで報道されたのだ。髪形も服装も開拓時代のように古風な女性と子供が、ソーシャルワーカーと警官に伴われて、ぞろぞろとスクールバスに乗り込み、共同体から連れ去られる―。そんな奇妙な光景に全米の視聴者が釘付けになった。

 強制捜査のきっかけは、ある女性からのたび重なる電話だった。YFZ農場で中年の夫に性的・肉体的な虐待を受けたとして、自称16歳の女性が家庭内暴力の相談所に訴えたのだ。その前の年には、FLDSの指導者ウォレン・ジェフスが14歳の少女と信徒の結婚式を執り行った容疑でユタ州の裁判所から有罪判決を受けていたこともあって、警察が動いた。

 だが間もなく、通報はいたずらと判明。捜査時に保護された約400人の子供たちは、虐待や育児放棄の証拠が不十分だとして、ほとんどが2カ月以内に家族のもとに帰された。

 それでも、テキサス州の司法当局は、妊娠中やすでに出産を経験した10代の少女たちから事情を聴取し、未成年の少女が年長の男性と“契り”を結ばされるケースが相当数あるとみて、捜査に乗り出した。その結果、ウォレン・ジェフスをはじめ12人の信徒が、重婚や未成年者に対する性的行為の容疑で起訴された。最初に裁判にかけられたレイモンド・ジェソップは2009年11月、1件の容疑で有罪となった。ほかの被告の裁判は2010年に行われる予定だ。

 ユタ州ヒルデールにあるジョー・ジェソップの自宅裏手の丘からは、ユタ州とアリゾナ州の州境からグランドキャニオンの北端まで、約80キロ続く渓谷地帯が一望できる。草木もまばらな乾燥地だが、この丘のすぐ下には農地と壁で囲まれた家々が広がる。ヒルデールとコロラドシティーの町だ。88歳のジョーはこの二つの町をまとめて、古い地名で「ショートクリーク」と呼ぶ。「私が子供の頃、初めてここに来たときには、7軒くらいしか家がありませんでした」

 ショートクリークには現在、推定6000人のFLDS信徒が暮らす。FLDSの共同体としては最大規模だ。メリルの兄であるジョーは、二つの面でショートクリークの発展に貢献してきた。一つは、独学で技術を身に付けて用水路と貯水池を建設し、乾いた荒れ地を緑の沃野に生まれ変わらせたこと。もう一つは、大家族の家長として46人の子供をもうけたことだ。少し前に数えたところ、孫は239人いたと言う。

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