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特集

氷河の絶景 パタゴニア

FEBRUARY 2010


 こうした航海が行われていた一方で、この海域では基本的な探査すらつい最近まで行われていなかった。地図のあちこちに記されている英語の地名は、1830年に英国の調査隊がこの一帯を探査した名残(なごり)だ。ピオ11世氷河だけは、1931年に初めてこの南沿岸部の氷原を踏破したイタリアの探検家が、当時のローマ教皇ピオ11世をたたえて名付けたものだ。

 2007年に氷河の調査報告をまとめた研究者たちは「南米の氷河にはまだ探査されていない重大な欠落部分がある」と指摘するしかなかった。正確に言うと、ベルナルド・オヒギンズ国立公園、カタラリハール国立保護区、ラス・グアイテカス国立保護区、ラグナ・サン・ラファエル国立公園など、チリのパタゴニア地方のフィヨルド海岸に連なる保護区の大半の内陸部は、未踏査のままになっている。

 この地域を脅かす変化は水路からやって来る。現在、プエルト・ナタレスの町を起点に、氷河観光用の小型クルーズ船が何隻か航行している。このナビマグ・フェリーはプエルト・ナタレスから北のプエルト・モントまで、片道4日かけて移動し、途中、プエルト・エデンに寄港して荷下ろしを行う。付近の海域はチリ海軍がパトロールし、チリの森林公社(CONAF)が、この地域の保護と森林資源管理を担当している。

 過去1世紀で、この地域に生息する生物や先住民の数は減少の一途をたどった。初期の探検家たちが見つけた、ピオ11世氷河の終着地であるエア・フィヨルドの湾口にあったアザラシの繁殖地は、はるか以前に消滅している。以前はこのフィヨルドに囲まれた海域にはさまざまな種類のクジラがやって来たが、今ではめったに姿を見かけなくなった。かつて地域の漁業を支えていたムール貝は赤潮の被害で激減してしまった。さらにこの地域を拠点に生活していた狩漁民アラカルフは、人口が減り、今ではごく少数がプエルト・エデンで不遇をかこちながら暮らしている。

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