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特集

氷河の絶景 パタゴニア

FEBRUARY 2010


広がる地上最大の氷原

 この荒々しい大自然の中心に広がるのが、ベルナルド・オヒギンズ国立公園だ。全長約350キロのこの国立公園を含む南部と北部の氷原は、極地以外では地上最大規模だ。

 ベルナルド・オヒギンズ国立公園には、陸路でも、空路でも到達できない。この公園を訪れるには、迷路のようなフィヨルドを船で抜けていくしかない。水路はピオ11世氷河の突端まで続いている。ここまで来ると、氷河が砕ける際に立てる、すさまじい音が聞こえてくる。氷原の奥深くからは、割れてきしむ氷河の鋭い音が聞こえてくるし、ピオ11世氷河の突端では、氷河の塊が鈍いごう音とともに崩れ落ちる。

 氷河と雨林が接する境界では、ピオ11世氷河が空をさえぎり、真昼の太陽に向かって突き出た氷の塔のようにそびえている。この荒涼とした最果ての地では、自然界のあらゆる力が緊密に結びついてこの世界をつくっている。

 チリのパタゴニアは、辺境の地でありながら、変化の波にさらされている。点在するわずかな数の牧場はのどかな風情があるが、ベルナルド・オヒギンズ国立公園の北側では、河川にダムを建設する計画が持ち上がっている。さらに沿岸部ではサケの養殖場が次々とつくられている。養殖場は経済発展の原動力でもあるが、同時に環境も破壊する。

 環境保護活動家からの要請で、チリ政府は南沿岸部一帯の広大な氷原と保護区の大半を、ユネスコの世界遺産に新たに登録することを検討してきた。だが2009年の時点で、政府はこの野心的な計画を見送り、より小規模な計画に切り替えようとしている。それでもまだチリには、南半球の最果ての地に、広大な自然保護区をつくるチャンスがある。取り返しのつかない変化に見舞われる恐れがあるとはいえ、この大自然は、まだ探査が始まったばかりだ。

 地図上で見ると、チリのフィヨルド海岸に群島が延々と連なり、まるでアンデス山脈からころがり落ちた小石のようだ。群島の間を抜ける主な航路は早くから探査され、海図が作成されてきた。すでに1579年には、スペインの探検家ペドロ・サルミエント・デ・ガンボアが苦難の末、この水域を通過している。1741年には、英国の艦隊が遭難し、軍人のジョン・バイロンがそのときの体験を「ジョン・バイロンの大冒険」として出版し、好評を博した。彼が乗っていた船が座礁した島は、船の名にちなんで「ウェイジャー島」と名付けられた。

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