/2009年12月号

トップ > マガジン > 2009年12月号ハッザ族 太古の暮らしを守る


定期購読

日経ナショナル ジオグラフィック 翻訳講座 秋期受講生募集中 詳しくはこちら

ナショジオクイズ

Q:次の生き物のうち、カブトガニに最も近いのはどれでしょう?

  • クモ
  • カニ
  • カメ

答えを見る



特集

ハッザ族
太古の暮らしを守る

DECEMBER 2009


 ハッザ族の暮らしぶりは、1万年前に農耕が始まる以前の人類の生活をかいま見せてくれるようだ。そのため、人類学者は彼らに大いに関心を寄せている。ただし、過去15年間ハッザ族を調査してきた米国フロリダ州立大学の人類学教授フランク・マーロウによると、一般的に人類学者は、狩猟採集民を「生きた化石」のようにみなすことには慎重だという。

 ハッザの人々も、時代の流れにまったく取り残されてきたわけではない。それでも、長年にわたって周囲の農耕民と接触があったにもかかわらず、狩猟採集の生活をかたくなに守ってきた。彼らの暮らしは遠い祖先の時代からほとんど変わっていないのではないかと、マーロウは見ている。

 今からおよそ200万年前に出現したヒト科ホモ属(ヒト属)は、その歴史の99%以上を狩猟採集民として生きてきた。

 農業と牧畜が始まると、人類史のわずか1%に当たる期間に、地球環境は大きく改変された。食料生産の増加で人口密度が高まり、人口の増加により食料の増産に拍車がかかって、農耕民の集団が狩猟採集民の生活圏に入り込むようになった。集落が形成され、それがやがて都市へ、さらには国家へと発展し、比較的短期間に、狩猟採集の生活様式はほとんど姿を消した。今では、主に狩猟採集で生活する集団は、アマゾン川流域や北極圏、パプアニューギニア、アフリカなどに、数えるほどしか残っていない。

 農耕の急速な広がりは代償ももたらした。人口密度が高まって感染症が猛威を振るうようになったこと、集団内に階層序列ができたこと、気候の周期的な変化などで飢饉(ききん)に見舞われるようになったこと、そして大規模な戦争が行われるようになったことだ。米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校の教授で、数多くの著書があるジャレド・ダイアモンドによると、農耕の採用は「人類史上最悪の過ち」であり、私たちはその代償を払い続けてきたという。

 ハッザ族は戦争をしない。小さな集団で散らばって暮らすため、感染症が深刻な脅威となることもない。飢饉に苦しんだという話も聞かない。むしろ凶作の年には、農耕民がハッザのキャンプに身を寄せたという記録が残っている。ハッザ族ほど多様で安定した食生活を送る人々は、世界でも少ないだろう。

 彼らの生活には、自由時間がたっぷりある。人類学者の推定では、食料の確保に費やす“労働時間”は1日4~6時間だという。しかも、ハッザ族はその長い歴史を通じて、環境にほとんど負荷を与えない暮らしを営んできた。

Back4next

年間購読のお申込はこちら

ナショナル ジオグラフィック バックナンバー