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特集

ハッザ族
太古の暮らしを守る

DECEMBER 2009


ヒヒ狩りに出発

 行きたい、と私は答えた。ただし、白い肌は闇の中で目立ちそうなので、シャツは脱がなかった。オンワスと10人の男たち、少年2人、そして私は、一列になって出発した。日没後に灌木地帯を歩くには、かなりの勇気がいる。とげだらけのアカシアや灌木が茂り、歩いているとあちこちにとげが刺さる。ハッザの人々は、体に刺さったとげをナイフの先端でお互いに抜き合う作業に、空き時間の多くを費やす。

 夜にはいばらを避けようにも、木々は闇に包まれ、進むべき方向すら見当がつかない。道もなければ、目印になるものもほとんどない。日没後に懐中電灯なしで自信をもって歩くには、自分の寝室のように辺りの勝手がわかっていなければならない。それにしてもこの“寝室”ときたら、広さが2500平方キロもあり、暗闇のそこかしこにライオンやヒョウやハイエナが潜んでいるから、たまったものではない。

 生まれてこのかたずっとこの地で暮らしてきたオンワスは、迷うことなくどんどん進んでいった。棒切れを使って30秒足らずで火をおこせるし、ミツオシエという野鳥に口笛で呼びかけ、返ってきた鳴き声を聞いて、はちみつを見つけることもできる(ミツオシエは、ハチの巣の場所を鳴き声で他の動物に教える鳥として知られている)。灌木地帯で生きていくのに必要なことは何でも知っているのだ。

 その代わり、生活圏の外のことはほとんど知らない。タンザニアの大統領の名前さえも知らなかった。

世界でも数少ない狩猟採集民

 ハッザの人々は、大地溝帯にある浅い塩湖、エヤシ湖の周りに広がる平原に昔から暮らしてきた。今は1000人ほどがこの地で生活している。彼らの一部は、村の近くに移り、農場労働者やツアーガイドの仕事に就いている。

 だが、オンワスのキャンプの人々も含め、ハッザ族のおよそ4分の1は、今も狩猟採集生活を続けている。農耕はせず、家畜も飼わず、定住する家ももたない。大地溝帯では初期人類の最古級の化石群が発見されているが、ハッザの生活圏はその出土場所のすぐ南にある。遺伝子の解析結果によれば、彼らは、ひょっとすると10万年以上も前に遡(さかのぼ)る、現生人類の最古の系統の血を引く可能性があるという。

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