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花粉が運ぶ愛

DECEMBER 2009

文=ロブ・ダン 画像=マルティン・オエゲルリ

の地球に森があるのも、花があるのも、花粉があるからこそ。植物が風や昆虫に託して見知らぬ相手に贈る“愛”の秘密に迫る。

麗しき異性を追いかけてみたり、ときには酒の勢いを借りて相手ににじり寄ったり。
私たち人間は、自力で動いて異性にアプローチすることを当たり前と思っている。
だが、植物にしてみれば、それらはとてもかなわぬぜいたくだ。

 大昔、陸上に進出したばかりの植物は、触れ合うほど近くにいる仲間としか愛を交わすことができなかった。つまり、生殖できなかった。

 たとえば、コケなどの原始的な植物がそうだ。白っぽい精子を雨水の中に放出し、それを近くに生えたパートナーの方へ漂わせる。だが、このやり方には水分が欠かせない。植物は“仲人(なこうど)”のいる湿地でしか生きられず、地上は大半が赤茶けた不毛の大地だった。

“見知らぬ相手”を求めて

 転機が訪れたのは3億7500万年以上前のある日のこと。花粉と種子を持つ裸子植物が登場し、すべてを一変させたのである。

 花粉はいわば、殻に守られた精子だ。一粒の花粉には、やがて分裂して二つの精子になる「生殖細胞」が含まれている。細胞壁がこれを包み込むことで、精子は守られ、移動も可能になった。この絶妙な進化によって“見知らぬ者”同士が生殖を行えるようになり、世界は大きな変貌(へんぼう)を遂げたのである。

 ただし、生殖が成功するかどうかは、相変わらず運頼みだった。花粉は風に身を任せるのみで、目標に到達する比率はわずかなものだった。それでも時を経るうちに、いくつかの改善がなされていく。

 たとえば花粉袋が破裂して、花粉を飛び出させるようになったものがある。風に乗りやすいように風船のような器官を進化させたものもある。作られる花粉の数も、何万何億と増えていった。たくさん撃てば、それだけ目標に当たる数も増えるからだ。

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