/2009年12月号

トップ > マガジン > 2009年12月号中国の火薬庫 ウイグル


定期購読

記事ランキング

ナショジオクイズ

国会議員に占める女性の割合が61%と193カ国の中で最も高い国がルワンダ。では、日本はどれくらいの割合で何位でしょうか?

  • 39.7%で16位
  • 23.5%で78位
  • 10.2%で165位

答えを見る

ナショジオとつながる



特集

中国の火薬庫 ウイグル

DECEMBER 2009


もうひとつの少数民族問題

 西側諸国は昔からチベット独立運動には高い関心を寄せているが、そのすぐ近くで起こっている、もっと深刻な実態はあまり知られていない―それがウイグル族問題だ。この問題の注目度が低い状況は2つの意味で皮肉としか言いようがない。ひとつは、西側諸国が図らずもそれに加担していたこと。そしてもうひとつは、歴史の向こうに消えつつあるウイグル民族が、かつて世界の中心だった場所にいたこともあるということだ。

 地球でいちばん高い山々に囲まれた新疆(しんきょう)は、アジアの中心に位置する。古代から商人や旅人が、雪におおわれた峠の細道を通って東西を往来した。その道はやがてシルクロードとなる。

 新疆はアジアとヨーロッパにとってきわめて重要な場所になった。トルコの侵略者やチンギス・ハーンの軍勢、仏教徒やイスラム教徒、貿易商人や部族民、宣教師、僧侶―多くの人たちが新疆という高地を通り、足跡を残して去っていった。新疆の歴史は、ここに暮らす人びとの顔が如実に物語っている。浅黒い肌に大きな目の者もいれば、白い肌で目が細く、瞳が黒い者もいる。ブロンドの髪に青い瞳の持ち主さえいるのだ。

 新疆ウイグル自治区の南西端にある和田(ホータン)では、ウイグル文化を守るうえで地理的条件も一役買ってきた。万年雪に覆われた高峰が背後に控え、前面にはポーランドの国土がすっぽり入る広さのタクラマカン砂漠が広がる。もっぱら農業で生計を立てている和田の人びとは、日曜日になると町はずれの市場(バザール)に集まる。墨玉(カラカシ)川の氷塊で作った甘いかき氷は、子どものお気に入りだ。女たちは絹製品を山積みしたテントを見てまわり、男たちは冗談を飛ばしながらひげを手入れしてもらう。

 昔と変わらない光景だが、よく見ると新しい技術も入りこんでいる。道ばたにずらりと並ぶ研ぎ屋が使う回転砥石は、中古の自転車を改良したもの。一人の青年が、食べていた羊の肺の煮込み料理を味見させてくれた。

 私はウルムチで、音楽教師のダウド(仮名)と知りあった。彼が少人数の生徒に教えている学校を訪ねると、そこにはマシュラップの様子を描いた絵が飾ってあった。マシュラップとはウイグル族伝統の宴で、男たちが音楽を演奏したり、詩を吟じたりして交流するものだが、現在は中国政府によって厳しく規制されている。ダウドは針金と糸で手作りしたフィンガーピックをはめると、ギターのような5弦の楽器を奏でながら歌い始めた。複雑な旋律のその歌は、少なくとも5世紀にまでさかのぼるという。

Back2next

年間購読のお申込はこちら

ナショナル ジオグラフィック バックナンバー